高齢者介護のあれこれ

介護相談員の在宅介護ガイド

家には飲まない薬がたくさん! 増え続ける薬どうすればいいの?

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1.超高齢化社会の日本、高齢者の飲む薬も多い。

 

超高齢化社会の日本。いまでは65歳以上の高齢者の割合が27%を超え、4人に1人が高齢者の時代です。その高齢者のほとんどは高血圧や糖尿病など、さまざまな病気を患っています。もちろん飲む薬もたくさん。10種類以上の薬を飲んでいる高齢者も少なくないです。高齢者の過度な薬の服用は気分を悪くして、後に重い介護状態に陥る『転倒』につながる事も多くあります。

 

2.残る薬がたくさん、これどうすればいいの?

 

飲まない薬が薬局の袋に入ったまま、いくつもいくつも溜まっている。在宅介護中の高齢者の家によくある風景です。定期的に病院やらクリニックやらに通って薬を頂いて来ますが、結局飲まずに残ります。この残薬の費用だけで年間約500億円!この500億円は患者と国が無駄に払っているお金でもあります。しかも本来の処方で狙っていた治療の効果も期待できません

 

高齢者の場合、同じ薬を繰り返してもらっていることが多いので、しばらく診察に行っても薬はもらわずに残った薬を飲んで無駄な薬代を節約することもできます。それではそもそも、なぜ薬が残るでしょうか。

 

3.高齢者の家に薬がたまる原因はこのようなもの。 

 

① 薬を飲むのをついつい忘れてしまっている

年を取るとうっかりと忘れること多々。薬も飲んだか飲んでないか記憶できないので飲まなかったり、逆に飲みすぎたりと正しく薬を飲むことができません。

薬を毎回ちゃんと飲ませられる環境でない場合は、1日3回処方された薬を朝晩の2回や朝の1回だけにすることはできないか、かかりつけ医の先生に聞いてみるといいです。

意外と薬が減らせられて、飲む回数が減ったことで薬を残すことなく服用できて体調や病状がよくなることが多いです。

 

②錠剤が飲みこみづらくて薬を飲まなくなっている

 高齢者になると衰える「飲みこむ力」。薬の錠剤を飲みこもうとしても、お水と一緒に飲みこんだはずが錠剤だけが口に乗ってしまうことが多いですよね。こういった場合は同じ種類の薬でも、液体やゼリー状、ゲル状の薬が出ている場合がありますので、ぜひとも医師や薬剤師に相談してみてください。どうしても錠剤の薬しかない場合は、1回に飲む薬が5錠以上の場合は5錠以下にまでに減らしてもらうことも一つの方法です。飲む薬を減らす事で薬剤による体調不良と転倒の危険も軽減できます。

錠剤が飲み込めないからといって家庭で錠剤をつぶすことは絶対に禁物!

腸で溶けるように作られている薬が胃の中で溶けてしまって、飲んだ意味がないこともあれば、薬が急に効きすぎて大事に至ることもあります。

しかも、鎮痛剤の薬などはつぶすことで口がしびれる程の強烈な苦さに襲われることもあって、服薬がもっと苦手になることもあります。必ず医師や薬剤師と相談しましょう。

 

③薬の副作用で体調が悪くなるために飲むのを辞めてしまっている

日本での医師の敬称は「さま」。お医者様とも呼びますよね。それだけお医者さんはありがたいけど、なかなかものが言えない相手でもあります。特に高齢者はお医者さんにわるいからといって、なかなか相談ができないことがあります。

薬によっては副作用があるものもあって、いろんな病院でいろんな薬をもらって飲んでいる高齢者には特にさまざまな副作用が起こりやすいです。

実際に手足がしびれる副作用があっても医師には相談できず、そっと薬を飲まずにいた高齢の患者さんも少なくありません。薬を飲まずにいる高齢者がいたら副作用のような症状がないか聞いてみましょう。薬による不調があると思われる場合は必ず医師と相談して薬を変えてみましょう

 

④本人や家族だけの判断で飲む薬を減らしたり絶っている

鎮痛剤を飲んでいる高齢者の中には、「動かなければ痛まないので薬飲まずにじっとしていればいい」と思って薬を絶ってしまう方がいます。確かにそうですが、薬は患者の症状の改善のために処方されているので、勝手に薬を絶ってしまうと患者の容体に何が起るかもしれません。

しかも関節の痛みなどで鎮痛剤を飲んでいる方も、動かないようにするとますます運動機能が低下して寝たきりになる可能性も増えます

動かないでベッドに横になりっぱなしになることによって床ずれになったりもします。

老後の元気な毎日を少しでも長く維持するにも薬はちゃんと飲んで、適度に体を動かすことが大事です。

 

⑤そもそも薬を認知することができず飲めなくなっている

 認知機能が低下すると、薬はもちろん、ご飯を食べることが何なのかさえも忘れてしまうことが有ります。毎日決まった時間にご飯を食べて薬を飲むことももちろん難しくなります。

このような場合は薬局の訪問薬剤師さんに相談しながら家族が適切な調剤指導を受けたり、ヘルパーなど家に訪問する介護スタッフの手を借りないといけません

 

4.なにごとも一人で悩まず専門家と相談しましょう。

 

薬は飲まないと体が痛むし、精神的な苦痛が増したりもします。中には認知症の進行を遅らせる薬もあるので、継続し飲まないと高齢者本人の生活の質が落ち、介護者の負担も重くなったりもします。

 そのため、飲まない薬がたくさんたまってしまうなど、薬に関する悩みがあるなら医師や薬剤師に相談しながら指示通りの服薬ができるようにしましょう。

高齢者健康の大原則『みずめしうんうん』とは?

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1.みず・めし・うん・うん とは?

『みずめしうんうん』実は介護現場ではよく聞く言葉です。

高齢者の身体機能はもちろん、認知機能の維持、改善までに役立つ魔法のような法則です。

 

それは「水、飯、ウン(コ)、運(動)」です。つまり、十分な水分を摂り、十分なご飯を食べ、快便し、適度の運動をすること。これが高齢者の体と心の健康を維持、改善するための最も大事な基本です。最近では、この「みずめしうんうん」が認知症予防に最も大事な原則とした医師による学術シンポジウムもよく開かれています。

 

1-1.水:水分補給と脱水の予防

 

高齢者の老衰は単なる加齢のせいではありません。100歳でも自転車に乗って出かける方もいれば重病を患わなくても70歳で寝たきりになる方もいます。高齢者になって体調を大きく崩す原因に一つに『脱水』があります。

 

人は加齢とともに体内の水分量が減ります。子供のときは身体の70%が水分ですが、高齢者になると身体の水分は50%にまで激減します。そのため、少しの水分を失うだけで脱水症になりやすいです。汗や尿、下痢、嘔吐など、急に水分を失うときは特に脱水症になりやすいので注意する必要があります。

 

骨粗しょう症の方など、骨の弱い高齢者が脱水によって転倒する場合、あまり強くぶつからなくても大きな骨折をすることが多いです。この骨折によって自立して生活していた高齢者が突然介護状態に陥ることは非常によくあることです。高齢者が足の骨を折ってしまい、数週間以上ベッドに横なる場合、急激に筋肉が落ちて寝たきりになる危険性が高まります。75歳以上の後期高齢者の場合は、1か月以上のベッド生活で8割を超える高齢者がリハビリが必要な寝たきり状態になったとの事例報告もあります。

 

また、脱水による転倒は、外部衝撃による認知症を引き起こすことがあります。頭をぶつけなくても体をつよくぶつけてしまうことで認知症を発症することがあるので、常々からこまめな水分補給には十分に気を付ける必要があります。

 

1-2.飯:栄養摂取と低栄養の防止

 

日本の要介護者は600万人超。高齢者の低栄養改善に努める「日清オイリオ」の調査によると要介護者の40%以上が低栄養状態にあるか、または低栄養傾向にあると言います。ほぼ2人に1人が低栄養のリスクがある状況です。栄養状態が悪くなると免疫力と筋力が落ちるため、運動機能が低下し、やがて一人では生活のできない寝たきりの状態に陥ります。免疫力低下による肺炎などの感染症も増えるようになります。

 

高齢者になると食が細くなりがちですが、高齢者が摂取しなければならない栄養は若い人と比べて大きく落ちるものでありません。特に筋肉をつくるタンパク質は若い人と同じくらい摂取しないといけません。しかしながら高齢者は健康的な食事を摂るつもりで野菜ばかりの質素な食事を少量だけ摂ったり、糖尿病を気にして糖質を減らそうとご飯を食べなかったりすることも多いです。この間違った健康志向が介護状態に陥る最悪な生活習慣になり得るので、医師の制限がない限り肉類を十分に取り入れた栄養価の高い食事をする必要があります。

 

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1-3.ウン(コ):腸内環境の改善と快便

 

今は慢性の便秘患者が1000万人を超える時代。最近は若い人も腸内環境を気にして、ヨーグルトなどの発酵食品の商品も右肩上がりで伸びています。大腸は第二の脳とも呼ばれ、人間の免疫をつかさどる大事な臓器と呼ばれます。年齢問わず気を付けるべき腸内環境ですが、高齢者になると腸内環境の悪化が命にかかわることさえあります。

 

高齢者は運動量が少ないために大腸の刺激が少なく、普段から摂取する水分量も少ないです。しかも長年便秘の薬を飲んでいて、薬が効かなくなった方も少なくありません。そのために毎日便秘で苦しむ高齢者が多いのが現状です。便秘によって腸内に長く留まった便は水分を奪われて石のように固まります。そのため、場合によっては直接肛門に指を入れて固まった便を取り出す『摘便(てきべん)』を行う必要があったり、それでもダメな場合は手術をして便を取り出す場合もあります。大腸内で固まった便が神経を圧迫して死亡に至った例もあるほどなので、健やかな老後を送るためにも普段から適切な水分補給と運動、食事で便秘を改善、予防する必要があります。

 

適切な生活習慣の見直しで毎日快便できるようになれば、身体の免疫力があがって病気になりにくくなります。また、便秘の改善で食欲が出るようになって低栄養や脱水を未然に防止するためのキッカケになったりもします。元気な毎日を送るための最も大事なものが、この快便なのかもしれません。

 

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1-4.運(動):適切な運動

 

言わずともわかる、運動の重要性。若い人もそうですが、運動量が減ると自然と運動機能も低下します。特に高齢者は筋肉が衰えやすいために、普段からの継続的な運動を習慣化することが大事です。

 

運動をすることでお腹が減り、喉が渇くことで食欲が増進し、水分補給が進みます。また身体が温まることで免疫力が向上し、認知症の予防と改善によい影響を与えるとの研究発表もあります。しかも運動は大腸に刺激を与え、お通じがよくなります。いいことだらけです。

 

2.『みずめしうんうん』を意識して元気な老後を送りましょう。

『みずめしうんうん』は、どれか一つだけをとってもバランスがよいとはいえません。しかし、どれか一つの改善からもよいサイクルは始まります。実践しやすいところから日々の生活習慣を見直し、みず『めしうんうん』を改善していくことが大事です。健康寿命を延ばし、元気な老後を送るための最強の魔法の言葉、『みずめしうんうん』を忘れずに毎日気を付けていきましょう。

 

老人ホームの入居金、なぜ払うの? 戻ってくるの?

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1.不安がいっぱいな老人ホームへの入居

日本は進む高齢化社会にともなって、老人ホームの入居者も年々増えています。しかし老人ホームへの入居なんて、ほとんどの人は初めてのこと。特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などなど、基礎的な施設の種別だけにしても何がなんだかよくわかりません。それに高齢者の施設検討というものは、家族の家との距離、医療と介護の体制、認知症のケアなどなど、家を買うよりも考えなければいけない要素が多いものです。なのに、「入居先がひどかったから退去しちゃった、もう金もないし行く当てもない」なんて悲しい出来事も高齢者の間ではちらほらと聞こえてきます。老人ホームへの入居には数百万円のまとまった入居金を収めることもよくあって、間違った施設入居で大切な老後の資金を失くしてしまうこともあります。

 

2.老人ホーム入居費用は、入居金+月額料金+実費

まず、老人ホームへの入居を初めて検討する方の為に、老人ホームに入居するときの費用について簡単にまとめてみます。老人ホームの入居の時は入居時に一括払いする入居金、そして毎月払う月々の家賃と食費などの料金、そして介護保険や医療保険の自己負担金や、場合によっては追加の介護サービス費やおむつ代などがかかります。

 

最近では東京都をはじめとする行政が施設入居時に入居金払わせないでほしいとの勧告が出ていて、入居金0円で月額と実費負担のみの老人ホームも増えてきました。そのために入居金負担が軽くなった施設も増えていますが、入居金の負担が月額料金に上乗せされることで月々の負担は増えています。入居金は1回払ってしまえば済む終身契約にもとづくもので、新たに他の老人ホームに入居する以外では改めて入居金を払うことはありません。そのために、高い月額料金を長い間払い続けるより5年を超過して入居する場合はまとまった入居金を払ってしまうほうが最終的に経済的なのです。

 

【入居金型契約と月額料金契約の費用の差】

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  • 入居金型契約例

 

【入居金380万円・月額料金17万円】

1年入居時の累積費用 584万円(月平均48万円)

3年入居時の累積費用 992万円(月平均27万円)

5年入居時の累積費用 1400万円(月平均23万円)

10年入居時の累積費用 2420万円(月平均20万円)

 

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  • 月額料金契約例

 

【入居金0円・月額24万円】

1年入居時の累積費用 288万円(月平均24万円)

3年入居時の累積費用 864万円(月平均24万円)

5年入居時の累積費用 1440万円(月平均24万円)

10年入居時の累積費用 2880万円(月平均24万円)

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▲このように5年を境にまとまった入居金を払った方が最終的な費用が安く済むことが分かります。また、高い月額料金を払い続けるのは、「今後何年入居するかわからない=今後いくらかかるか分からない」不安もあるので、将来の費用を抑えるにも入居金型契約が良い場合もあります。もちろん、余命が短い方や5年以内に長期入院の可能性が高い方は月額料金契約がお得になります。

 

3. 入居金はなぜ払うの? そもそも何なの?

入居金は本来、月額家賃の補てん額の前払い金といった名目で収めるお金です。つまり、「居室の家賃を前もって払っておくことで月々の家賃を少なく払いましょう」といった契約形態なのです。上で述べたように、入居金型契約は長期入居者にとっては将来の経済負担が軽くなったり、施設運営会社としては施設運営のまとまった資金が手に入るので相互にメリットのある仕組みなのです。入居金は、実際に入居者が平均5年でご逝去、入院による退去(老人ホームの平均入居年齢が80歳半ばなので)されることから、入居時に入居金の2~3割を償却(初期償却)し、残りを5年間にかけて均等に償却するケースが多いです。

 

老人ホームの実情として、高級な老人ホームも割安な老人ホームも入居者が毎月数十万円を払っているのにも関わらず多額な人件費や施設の修繕費に金がかかるので採算性が低い(儲かりません)です。施設によって異なりますが、老人ホームは居室の70%~90%が埋まっていてやっと現状維持のできる収益が確保できるので、ほぼ満床でなければ老人ホームは黒字にならないのです。そのために老人ホーム運営会社は、5年を満たさずに退去する方からの合計収益を高めたり(初期償却がある分、短い入居は施設側の利益率に貢献します)、まとまった運営資金を得るために入居金型契約を好む傾向にあります。

 

4.収めた入居金は戻ってくるの?

実はこの入居金、契約で定めた「入居金償却期間」以内に退去する場合は戻ってきます。入居金は敷金ではなく、家賃補てん額の前払い額なので、一定期間(一般的には5年、健康型老人ホームは6年~15年が多い)に渡って毎月均等に償却されていきます。たとえ、2年入居して退去する場合は残り3年分の入居金が戻ってくるのです。償却期間の5年を過ぎると退去しても戻ってくるお金はありません。このような制度があるために施設に入居してから入院やご逝去で早期退去される場合は入居金の一部が保全されるので安心です。

また、「入居してみたらやっぱり合わなかった」といった場合も少なくありません。この場合、普通ならば入居金の初期償却分として2~3割が償却されて消えてしまいます。仮に入居金が500万円であれば入居して1週間で退去しても150万円が消えてしまうのです。しかし、入居後3か月以内であれば入居金の初期償却をしないクーリングオフ制度を設けているので3か月以内に退去する場合は日割りで計算した入居金のみ償却し、初期償却はしません

 

5.入居金型契約と月額料金型契約、かしこい選択をしましょう。

老人ホームの入居金は数十万円から、数百万円、高級老人ホームでは3億を超えるところもあります。誰にとっても自分が入居する老人ホームの入居金は経済的に負担のかかるものです。入居者本人の状況をよくよく考え、悔いのない老人ホームの料金制度を選ぶようにしましょう。

高齢者が骨折したときの医療費、こんなにも高いの!?

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1.高齢者の在宅生活は骨折の危険だらけ

高齢者は筋肉が衰えやすいうえで発達もしにくく、若い人並みにタンパク質を摂ってもなかなか筋肉の維持が難しいです。とある医学系の研究によりますと、若い人が1日に8gで筋肉が作られるのに対して、高齢者は24gを摂らないと筋肉の維持ができないともいいます。そのうえ高齢者は運動量の低下や、病気や薬による味覚障害(または変化)によって食欲が減退することも多いです。このような栄養や健康上の理由から、高齢者は加齢と共に足腰が弱くなり、歩行もおぼつかなくなることが多いです。

 

一見、高齢者にとっては家の外の方が危なく見えてしまうこともありますが、実は家の中こそが危ないです。歩行がおぼつかない高齢者は家の中のわずか1~2cmほどの低い段差に引っかかって転倒し、骨折することが多いです。歩くのに障害物が多い家の中でありながら家の中という安心感のために油断することも多いことでしょう。さらに、夏場に限らずに発症する高齢者の脱水と、脱水にともなうふらつきと目眩(めまい)は転倒と骨折の大きな理由の一つです。さらに高齢者は骨粗しょう症によって骨が弱くなることが多く、軽くぶつかっただけでも簡単に骨折を引き起こすので要注意です。

 

 

2.陽子さんの入院のケース

陽子さん(仮名・85歳)は一人暮らしの高齢者です。加齢による物忘れや腰の痛みはあったものの普段は一人で問題なく生活できていました。ところが冬場のある日、朝起きて急に目眩がひどくて家の中の1㎝にもならない段差に引っかかって転倒してしまいました。倒れた陽子さんは一人では動けず、駆け付けた娘さんによって病院に運ばれました。病院にいって分かったのですが、陽子さんが倒れた原因は脱水による目眩(めまい)でした。冬場だと油断していたために暖房の効いた部屋で脱水を起こしていたのです。

 

また陽子さんの骨折ですが、病名は『大腿骨頚部骨折』、足の付け根部分を折ってしまっていました。そのために手術を行い、しばらくは入院することになったのです。その時のかかった費用ついてまとめてみました。

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・入院期間は約45日、かかった費用は211万円!

 

手術費 約20万円
入院費 約84万円
リハビリ 約58万円
その他医療費 約8万円+雑費41万円

 

この211万円が陽子さんの実際にかかった費用(医療費+その他費用)です。もちろん、陽子さんも高齢者の医療保険を利用して医療費合計の170万円の1割である17万円のみ負担しました。この17万円は、高額療養費の払い戻しで後から約9万円が戻ってくることになるそうです。

 

また、入院中は医療費のほかに、自己負担の食費や保険でカバーしきれないベッド費用、看病や諸々の雑費が45日間で41万円もかかったと言います。何にかかったか詳しくは確認できませんでしたが、入院にはいろいろとお金がかかるものです。

 

結局、陽子さんの骨折による入院費用の自己負担合計は45日間で約49万円でした。

 

 

 

2.高齢者の骨折手術費用、実は手術費よりもリハビリ費用が高額

 

大腿骨骨折の手術の場合、骨の複数の部分が折れて(複雑骨折しなければ)いなければ、骨のズレを元に戻して金属製の医療器具で骨を固定(骨折合術や工骨頭置換術など)する手術が行われます。患者が入院してから手術を受けるまでの間や、手術後の回復期間(ある程度骨がくっ付くまでの間)は、当然ベッドで安静にしていなければなりません。高齢者がベッドで安静にする場合、高齢者の運動機能は急激に落ちていきます。高齢者の場合は1日の安静で身体中の筋肉の1%が落ちるといった研究報告もあり、2週間の安静で2か月以上のリハビリが必要で、4~5週間の安静で半年以上のリハビリが必要な寝たきり状態になるとも言います。

 

高齢者の骨折手術費にはかなりの費用がかかりますが、実は最も費用がかかるのは手術後のリハビリ費用です。陽子さんの場合も45日間のリハビリで58万円もの医療費を支払いました。しかし手術後の運動機能によっては退院後も一人で歩けないことも多く、リハビリ病棟に移ったりリハビリ専門病院に転院したりしてリハビリを継続することも多いです。またここで長い間、リハビリの医療費がかかってきます。

 

実は陽子さんも退院後も一人での歩行が難しく、1か月の待機期間を経てリハビリ専門病院に入院しました。リハビリ専門病院では1か月に諸々と約50万円がかかっていて、高額療養費制度などの保険制度を利用することで自己負担額は半分以下になるとのことです。しかし、それでも骨折の手術費よりもリハビリ費用が多くかかることには経済的な負担が大きい様子でした。陽子さんはリハビリ専門病院での経過をみながら在宅に一人で復帰できるか様子を見ることにしましたが、家族の方々以上に陽子さん本人の不安が大きく、退院後は老人ホームへの入居なども検討し始めています。

 

 

3.骨折を防いで元気な老後を送りましょう。

今まで元気に一人で暮らしていた高齢者でも骨折による手術などで急に自立した生活ができなくなります。普段からの十分な水分補給と栄養管理、適度な運動、段差の少ない住環境の整備などに気を配り、ケガをしないことがとても大事です。骨折など、ケガを防いで元気な老後を送るようにしましょう。

 

 

高齢者の食費を行政が補助する『援助型配食サービス』について

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1.自炊できなくなる高齢者と、ヘルパー利用の限界

 

超高齢化社会の日本、全国民の4人に1人以上が高齢者です。また同時に、日本の高齢者単身世帯や高齢者夫婦世帯が年々増加する一方です。そのために高齢者の身体能力の低下に伴った家事と炊事の負担は見えないところで大きな社会問題になってきています。家事や炊事ができなくなったことから人間らしい衣食住を営めなくなり、低栄養状態をはじめとする健康問題を引き起こしています。

 

特に今まで家事や炊事を奥さんに頼っていた男性の独居高齢者は、火や包丁を使う炊事がまったくできないこともあって驚くことにスーパーの菓子パンで延命することも珍しくありません。また、認知症を患っている高齢世帯では家事や炊事のやり方を忘れてしまうこともあるので、常にヘルパーなどのサポートを必要とします。

 

しかし、ヘルパーの訪問は、介護保険の利用限度額や自己負担金の兼ね合いで、毎日来てもらえない方も多く、1回の訪問時間は20分~30分程度です。そして毎回の介護保険改定では、介護保険を利用した家事や炊事などの生活支援サービスは上限時間が短くなってきています。結局、ヘルパーによる生活支援サービスの時間は、スーパーに食料の買い物に付き添うだけで終わってしまうこともあります。そのために、毎日欠かせない食事の準備をヘルパーで全て賄うことは難しいのが現状です。

 

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2.高齢者向けの配食弁当サービスがある

 

自らは毎食バランスのよい食事が容易できない高齢者のために、様々な配食弁当サービスがでてきています。中には毎日3食のチルド弁当を届けてくれる会社もあれば、いつでも電子レンジで温めて食べられる冷凍弁当を届けてくれる会社もあります。その数社を簡単に紹介します。

 

〇ワタミの宅食(http://www.watami-takushoku.co.jp/

居酒屋の和民で有名なワタミが運営する配食弁当会社。毎日おいしいチルド食を届けます。

価格は、日替わり5日間コース(月~金)で3,200円(1食あたり640円)くらい。

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〇ミールタイム(http://www.mealtime.jp/

管理栄養士による栄養相談の上、いつでも温めて食べられる冷凍弁当を届けます。いつもチルド弁当が残ってしまって捨てていたり、炊事と並行して弁当を利用したい方にはお勧めです。

 

価格は、糖尿病性腎症の方向けごはん付き10食セットで6,260円(1食あたり626円)くらい。

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〇まごころ弁当(http://magokoro-bento.com/

全国に店舗数が最も多い配食弁当の会社。やわらかい料理やムース食などの介護食弁当まで対応しています。

 

価格は、1食約330円~1000円まで様々。

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3.配食弁当の費用を補助する行政サービスがある

 

1日3食の配食弁当は経済的負担が重いものです。1食が650円だと想定しても1日3食で1950円、1か月(30日換算)だと5万8500円もの金がかかります。収入の少ない高齢者にはかなりの負担です。

 

ここれ嬉しい情報があります。各市区町村では高齢者のための配食弁当の費用を一部負担してくれる行政サービス(生活援助型配食サービス)があります。住まいの市区町村が選んだ配食弁当の事業者が、高齢者の状況に応じて週1日から7日(祝休日含む)まで、朝食、昼食及び夕食を自宅まで配達するとともに、安否確認を行うサービスです。なお、こちらは市区町村で行っているものなので、地域によってサービスの内容は異なります

 

【一般的な配食弁当費用補助の対象者の要件】

・要支援や要介護の認定を受けている方

・介護予防・生活支援サービス事業対象者

・身体機能の低下などの理由で自ら調理できない

・世帯内に炊事を行う方がいない

・低栄養の改善や見守りが必要

 

▲このような要件を全て満たすことが必要です。

 

【1食あたりの利用者自己負担額例】

朝食:200円

昼食:350円

夕食:350円

 

1食800円程度の介護食弁当を500円程度にするなど、料金は地域によって異なります。

 

▲必ず3食お願いしなければならないことではありません。

 

 

以上の対象要件は、あくまでも一部の地域の基準要件で、地域ごとにサービス内容には差があります。なお、配食弁当の費用補助を利用するときには配食サービスをケアプランに位置づける必要があるので、事前にケアマネージャーに相談する必要があります。

 

4.まずは役所で相談しましょう。

 

お住いの地域に「生活援助型配食サービス」があるか、ご自分が対象になるのか、ケアマネージャーを通して役所や地域のあんしんすこやかセンターなどに相談しましょう。地域には健やかで安心な生活をサポートする行政サービスと専門家がいるので、上手に頼っていきましょう。

 

高齢者がご飯を食べない5つの理由と対処法

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1.加齢にともなう食欲の減退

 

高齢者の37%が低栄養状態35%が低栄養の予備軍、合計72%が栄養問題を抱えるという研究調査があるほど、高齢者になると細くなった食の為に低栄養状態に陥りやすいです。高齢者になると健康的な食生活を意識して、低カロリーの食事を摂るようにする方もいますが、このような生活の為に低栄養状態に陥るのはなんとも皮肉です。低栄養状態に陥るとどんどん食欲が減退して身体はやせ細っていき、運動機能の低下によって寝たきり状態になってしまうことも多くあります。

 

高齢者の食欲が減退し、食べる量が減ってしまうと恐ろしいことが起ります。若い人よりも筋力と免疫機能が弱い高齢者は、十分な栄養摂取ができないことで、転倒しやすくなったり、持病が急激に悪化したり、床擦れや骨折などの病気やけがの回復も大幅に遅れることもあります。このような悪いサイクルのために高齢者の健康寿命は大幅に縮み、10年以上に及ぶ長くてつらい介護の生活が始まってしまいます

 

2.高齢者が食べなくなった原因を考えて対処する必要がある

 

今元気な高齢者にとっても、今は介護が必要な高齢者にとっても、おいしく食べて元気になることは幸せそのものです。また、その幸せこそが身体的にも元気な老後を過ごせる源になります。高齢者になると病状や体調、精神的なストレス、認知症など、様々な原因により食べることができなくなります。その主な原因と対処法について簡単に紹介します。

 

①ターミナル期に入ったことによる食欲減退

 

人は終末期に入ると必要な摂取カロリーと水分量が減ります

ご家族はあくまでも弱っていく高齢者の家族に、少しでも元気になってもらいたくて、また喜んでもらうために食べ物を食べさせたり飲み物を飲ませたりと熱心に努めます。

 

しかし、ご逝去間近になって無理やり水分や食事を摂らせることで、逆に息を引き取る際に苦痛に襲われる上で死後ご遺体から消化しかけの飲食物と唾液が溢れ出るケースが多く報告されています。介護の現場では、これを「(飲食物に)溺れる」と表現するほど、その様は無残なものです。人間は死を間近にすると鎮痛効果のある脳内ホルモンが多く分泌され、死の苦痛にも耐えられるようになりますが、無理に飲食を強いられることで、その死に備えた鎮痛機能が働かなくなるのです。

 

その為に、終末期の高齢者の食欲がないのは、安らかな死を迎えるために準備段階に入ったと認め、認識する必要があります。ご家族にはつらいことでしょうが、医師により余命が少ないと判断された場合は無理に食べさせようとせず、本当に食べたいと思うものを少しずつ味見させたほうがよいでしょう。

 

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②認知症による食べ物への認知低下

 

認知症が進行すると、そもそも「食べる」こと自体を忘れてしまい、食べ物が食べ物であることを認知できない場合があります。この場合は食べる前に食べ物を目でちゃんと認識できるように見せて食べ物を認知させるところが大事だともいわれます。

 

その為に横になったまま、口まで運ばれる食べ物が見えないと認知症の高齢者とはいえ「異物が口に入ろうとする不安と恐怖」がある可能性があるので、できる限り背中を起こした姿勢で食べ物をみて認知し、少しずつ食べさせることがよいでしょう。

 

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③食べなければならないといったストレスによる食欲減退

 

実際にどうしても食欲が湧かないけど、家族など周りに人がすごく食べてほしいということでつらい思いをする高齢者が多いです。食べたくないのに食べさせられ続けると、つらいのは若い人も高齢者の人も同じ。やがて食べ物を見るだけでも吐き気がすることもあります。

 

高齢者の場合、バランスの良い食事も、病気に配慮した食事も大事ですが、それよりも食べたい意欲を失わないことが最も大事です。米とみそ汁のような典型的な食事にこだわる必要もありません。スナック菓子でも、アイスクリームでも、コンビニのプリンでも、食べたいものを少しでも口にしながら食欲を失わないようにすることが大事です。

 

また、ご飯を食べて元気にならなければならないという家族の強烈な気持ちも少しだけ抑えて、高齢者本人が食べたくないというのなら、医師との相談の上であえて2-3日絶食してみることも良いです。絶食を数日続けたところで、逆に食欲を引き出すことにつながったりもします。絶食後の食事も、食事でなくデザートや飲み物、アイスクリームなど、軽い食べ物から始めたほうが効果的です。

 

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④口の渇きによる食道の痛み

 

高齢者によくある症状の一つが、唾液の分泌量が減ること。つまり、口の中がカサカサに乾いてしまう症状(口渇ともいいます)です。口の中が乾くと食べ物の味が感じにくくなり、食欲が減退します。また、口が乾くと口腔内の環境が悪化し、悪臭もしやすく声も出にくく、乾いて割れそうになった喉の奥が飲食物を飲み込むときに痛かったりして食事そのものが嫌になったりもします。このような場合は適度な口腔ケアと口腔リハビリ、水分補給が必要です。地域の訪問歯科などに相談してみることをお勧めします。

 

⑤病状、服薬による吐き気

 

特にがんの患者は吐き気が強く、様々な病状や加齢のせいで味覚の障害が生じたり食べたい気持ちが薄れたりすることがあります。また点滴を打っている間は食欲が湧かないこともよくあります。ここはお医者さんとの相談で薬を変えてみたり、短期的に食欲を増進させる薬を追加したりといった方法も考えられます。

 

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3.食べることは生きる喜び。飲食を強いてはいけない。

 

ご家族の方々にはショックな話ですが、高齢者の食べられない理由は意外と家族が無理に食べさせようとしているからかも知れません。多くの高齢者が、おいしいものが食べられないことよりも、家族の食べさせようとする頑張りに激しいストレスを感じます。もちろん身体も弱り、病気やケガを直すためにも十分な栄養を摂る必要はあります。しかし最も大事なのは高齢者がなぜ食欲を失ったか、どうしたいのか、を考えて対応することでしょう。

 

美味しいものを食べることは人間の大の喜びです。

食べることを生きるためのツライ作業にせず、日々の喜びになれるように様々な食事の形を実践してみることをお勧めします。

 

高齢者が食べる『介護食』って、どんなものなの?

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1.高齢者のほとんどが普通には食べられない

 

日本の高齢者率は平成28年で約27.3%、国民の4人の一人が高齢者です。この高齢者の600万人が要介護認定を受けていて、毎日の生活に人の手を必要としています。食べることや飲みこむこともままならず、やわらかくて飲みこみやすい食べ物を食べています。その結果、高齢者の7割以上が低栄養または低栄養状態の予備軍といわれています。このような高齢者は継続的に増えていくみこみで2045年には2人に1人が高齢者、食べることに障害を抱える人も必然と増えることでしょう。

 

そして日本の高血圧患者は約5500万人、糖尿病は約2000万人、脂質異常症は約4200万人に上ります。高血圧ひとつをとってみても、患者の数は国民の半数に上ります。このような生活習慣病は、塩分や脂質、糖質、タンパク質など、普段の生活では馴染みの少ない栄養素を徹底して管理する必要があります。若い方は比較的にこのような生活習慣病にはならないので、結局は高齢者を中心とした中高年層のほとんどが栄養管理の必要な患者であることが分かります。

 

したがって、日本の高齢者のほとんどは、嚥下(えんげ)、咀嚼(そしゃく)と生活習慣病を考慮した特別な食事が必要ということになります。このような栄養の管理を怠ると、持病の悪化による合併症を併発させたり、低栄養状態によって重い介護状態に陥りやすかったりと、寝たきり状態に向かってまっしぐらです。

 

2.加齢と共に衰える、咀嚼(そしゃく)と嚥下(えんげ)機能

 

人は食べ物を口に運んでいき、歯で食べ物をすりつぶして唾液(つば)と混ぜて味わいながら飲みこみやすくまとめ、舌を中心とした口の中の筋肉の動きによって食べ物は喉を渡って食道を通って胃に入ります。この一連の流れが『食べる』機能です。

 

しかし、高齢者になると多くの人が食べ物を噛み砕く力、つまり咀嚼(そしゃく)機能と、食べ物を飲みこむ力、つまり嚥下(えんげ)機能が低下して、普通の食べ物は食べられなくなります。

 

普通の食べ物を無理に食べようとすると、十分に咀嚼できずに食べ物に窒息することもあります。毎年お正月には高齢者が餅を喉に詰まらせて死亡する事故が多発することから介護施設では餅つき禁止令が出されることもよくあることです。

 

また、嚥下機能の低下によって食べ物が肺に入ってしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。肺炎は日本人の死亡原因の第3位、多くの高齢者が肺炎をきっかけに自立した生活からも重い介護状態に陥たり死亡に至っています。

 

この咀嚼機能と嚥下機能は、適度な水分補給や口腔ケア(口腔リハビリなど)による口腔環境の改善で改善することもありますが、うまく食べられない間は高齢者の咀嚼機能と嚥下機能、病状を考慮した介護食を食べる必要があります。

 

3.安全でおいしい、高齢者のための介護食とは?

 

高齢者の食べる機能を補ってくれる食事を介護食といいます。一般に介護食というと不味い病院食や、味気のないお粥を思い浮かべる人が多いです。しかし、介護食と言え、おいしくないと高齢者は食べてくれません。食べてもらえないとせっかく用意した介護食も意味がありません。

 

介護食とは、咀嚼しやすく誤嚥を防ぐためにも食事の形状(大きさや軟らかさ)と飲みこみやすい粘度(まとまりやすさ)を調整した食事で、生活習慣病を患っている場合は疾患に準じた栄養成分の調整を行う場合もあります。

 

咀嚼しやすく食べ物の大きさを人口サイズよりも小さく切ったり、咀嚼があまりにできない場合は食べ物をミキサーにかけたりとして食べさせることもあります。また、あえてミンチにした肉や魚を固めて再形成することもあれば、片栗粉やトロミ剤を利用してドロッと飲みこみやすくすることもあります。同時に病状を考慮して、醤油や味噌など塩分の多い調味料を減らして出汁(昆布だしや西洋のブイヨンなど)の旨味や牛乳(出汁代わりに利用します)の旨味を利用することもあります。

 

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▲歯で海苔と具材が噛みちぎれない高齢者のための、やわらか巻き寿司の例

 

介護食は、確かに軟らかい食事が多いので見た目には違いができますが、お肉や魚はもちろん、寿司や揚げ物に至るまでメニュー自体は健康で若い人が食べるものと変わりはありません。味気のないお粥こそが健康的で低塩分の食事だと勘違いすることなく、おいしい介護食で食べる喜びを失わせないことが重要です。

 

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▲魚をすり潰してから再形成した軟らかな介護食の焼き鮭の例

4.介護食の上手なつくり方は?

 

高齢者になると食べる量は減りますが、若い人よりも食事を抜かすことが少なくなります。つまり、朝、昼、晩、3食を少しずつでも摂っている高齢者が多いです。そのために、高齢者が介護食を必要とする場合、余って捨てることになろうとも1日に3回も介護食を用意する必要があります。

 

在宅で高齢者の介護をしている人は配偶者か子供がほとんどですが、高齢者の配偶者も高齢者、子供も50代以上の中高年が多いため、毎日の介護食づくりは大変なものです。そのために、介護食は一度で高齢者から子供までが一緒に食べられるものとして作ってこそ、介護の負担を減らして継続できます。

 

▲子供から要介護者まで美味しく食べられる介護食レシピの一例

 

 家族みんなが食べられる、やわらかで塩分の少ない介護食を作ると、毎回1食分だけの介護食だけを作り、介護食だけが食べられず捨てられることもなく、家族みんなで食卓を囲んで楽しく同じ料理を食べることができます。高齢の方も自分だけが違う食べ物を食べさせられるより楽しく食べられ、十分な量の栄養が摂取することも多いです。

 

介護は平均として11年以上にのぼる長い道のりです。

適度に市販の介護食も使いながら、継続できる介護をしていきましょう

高齢者の低栄養防止の救世主、乳和食とは?

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1.低栄養と生活習慣病で苦しむ日本の高齢者

 

世界的な長寿国で名高い日本!男性の平均寿命は81歳、女性は87歳に上ります。その原因には日本の健康的な食文化である『和食』も大いに役立っているとのこと。最近では和食が世界無形文化遺産に指定されたり、世界の高級レストランで和食を取り入れたり、和食の名店が世界的なレストラン格付けのミシュランガイドに次々と掲載されるなど、その人気は上りウナギです。

 

しかし、日本の高齢者の37%が低栄養状態、35%が低栄養の予備軍、合計では72%の高齢者が栄養問題を抱えて不健康な毎日を過ごしていて、実はこの原因がなんと『和食』であるとも指摘されます。和食は脂肪分が少なめなので摂取カロリーが少なく、野菜中心の副菜が豊富なミネラルと食物繊維を補っています。現代に生きる栄養過多の若い人には健康的で美味しい和食ですが、食が細って身体の弱った高齢者には栄養不足の主要な原因になってしまいます。

 

しかも和食は、みそ汁やトン汁、塩焼きの魚、漬物、など、塩分の量があまりに多いです。そのために、高血圧や糖尿病など、様々な生活習慣病で塩分の制限をしなければならない高齢者にとっては、もっとも食べてはいけないものが和食なのです。しかし長年楽しんできた和食をあきらめるのは難しいもの。和食を楽しみながらも減塩を意識する必要があります。

 

2.高齢者の和食愛を救う『乳和食』の登場

 

① 乳和食とは

乳和食とは、味噌や醤油などの伝統的な和食調味料に「コク」や「うま味」の豊富な牛乳を組み合わせることで、本来の食べ物の味を大きく変えることなく塩分の量を減らした食事のことを言います。和食に牛乳?と、合わなさそうなイメージが強いですが、適量の牛乳を和食に組み合わせることで、料理本来の味を損なうことなくまろやかで塩分の少ない乳和食ができあがります。

 

実際に牛乳を入れた食事を高齢の入院患者に出してみたところ、8割の高齢者は牛乳が入ったことや塩分が減らされたことには気づかずにコクもあって美味しいと答えました。なんと恐るべし乳和食。もう時間かけて出汁を作ったり、減塩の為に頭を抱えることなく、牛乳を活用すれば楽ですね!

 

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▲乳和食みそ汁の一例(見た目にも味にも大きな変化はない)

 

② 乳和食で高齢者の栄養管理が簡単に

多くの人は歳を取るにつれて味覚が鈍っていきます。そのために高血圧や糖尿病などの病状の為に減塩に気を配らなければならないときも、ついつい濃い味を求めて塩や醤油を足してしまいます。その結果に体調を崩してしまうと強制的にお粥のように味気のない食事しかできない生活がはじまり、食欲を失って低栄養と運動機能の低下につながってしまします。

 

しかし、牛乳を利用した乳和食なら今までの味の濃さを損なうことなく減塩ができるので美味しい食事をより楽しめられます。また、牛乳を利用することで骨粗しょう症などと骨の弱い高齢者には嬉しいカルシウムの摂取にもつながるので、栄養不足→運動機能の低下→転倒→骨折と手術→寝たきり状態」といった高齢者によくある負の連鎖を断ち切ることもできます。まさに高齢者健康の救世主ともいえます。

 

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▲乳和食の例(出展: Jミルク乳和食サイト | 乳和食でおいしく減塩 )

 

③ 乳和食で病気予防

乳和食には減塩による血圧降下やカルシウムの摂取による骨粗しょう症予防以外にも牛乳を摂取ことによる嬉しい健康効果があります。日本で行われた大規模な疫学調査「NIPPON DATA」では、牛乳や乳製品の摂取量が多い人ほど、心血管疾患による死亡リスクが低下するという結果が報告されました。つまり心臓疾患のリスクが低下するとのこと。また、タンパク質が豊富な牛乳は、タンパク質不足による血管の痩せを防いで動脈硬化などの血管疾患を予防し、認知症の発症率を下げる働きがあるとの研究結果もあります。まさに高齢者こそ摂取すべき完全な食べ物ですね。

 

3.元気な老後を送るための乳和食の実践を

 

日本の高齢者は平均寿命こそ高いものの、後期高齢者と呼ばれる75歳以上ではほとんどの人が様々な病気に侵されて薬漬けの生活を送っています。その多くは栄養不足や、合わない食習慣のために健康を崩したためなのです。人は病気になる前は病気になってからのことはなかなか考えられないものです。しかし、少しだけ危機感をもって今日から毎日の料理に牛乳を入れてみてはいかがでしょうか。自分らしく元気で楽しい老後を送るためには、今から始める自分への配慮が大事です。乳和食、始めてみましょう。

老人ホーム入居検討、最初にするべき3つの情報収集方法を紹介!

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1.老人ホーム入居の検討は知らない事だらけ

 

団塊世代の高齢者によって介護を必要とする高齢者も急速に増えています。高齢者も多くは住み慣れた自宅を離れることにはかなりの抵抗がありますが、それでも病気やケガ、身体介護のために、療養病院に入院したり、介護施設に入居したりと、突然の生活環境の変化に戸惑うことが多いです。

 

その中でも老人ホームへの入居を検討する場合、老人ホームの種類とサービス、料金などがあまりに様々で慌てることも多々ありますね。老人ホームの入居など、普通の方であれば初めての方ですので知らないのも慌てるのも当然といえば当然です。

 

2.老人ホームの資料請求と相談方法

 

老人ホームといえど、その種類と施設ごとの特徴や予算はバラバラです。そのために先ずは地域と予算で最低限の条件で要件を絞って老人ホームの資料を取り寄せて比較検討をします。資料請求の方法は大きく3つあります。

 

ⅰ.インターネットサイトで一括請求

最近では賃貸マンションやレストランをインターネットで探すように、老人ホームもインターネットで簡単に調べられます。今では「みんなの介護」と「ライフル介護」という老人ホーム検索サイトが国内の2強で、どちらも全国の施設を幅広く網羅していて見やすいです。どちらもサイトに掲載している老人ホームから広告料を収益としています。

 

・みんなの介護

www.minnanokaigo.com

 

・ライフル介護

kaigo.homes.co.jp

 

老人ホーム検索サイトでは、地域、予算などで施設を検索することができ、また複数の老人ホームの資料を一括して請求できるのが大きなメリットです。また全てのサービスが無料で利用できるので特に、資料の請求に注意することもありません。

 

資料を請求すると老人ホームの営業担当者から案内の連絡が入ることもあるので、「まずは家族で話したい」、「基本的なことは知っているから聞きたいときにこちらから連絡する」と思う方は備考欄に「電話連絡は不要です」と書いておけば大体の場合は電話をかけてきません。

 

逆に現在老人ホームの入居を急いでいる場合は備考欄に「連絡してほしい」、「電話での相談がしたい」、「見学したい」など、要望を書いておけば施設の営業担当者が迅速に対応しますので自分にあった方法でご利用ください。

 

ⅱ.老人ホーム紹介センターで一括請求

 

老人ホーム紹介センター(業界では短く略して「紹介会社」と呼びます)は、町の不動産屋のような会社ですが不動産ではなく老人ホームの紹介を行う会社です。紹介センターは町の不動産屋とは違って、いくつかの大手企業が全国の老人ホームを紹介しています。紹介会社に電話して現在の状況と入居条件を伝えれば老人ホームの資料が手配できるので、インターネットで検索して資料請求することが難しい方でも、楽に資料請求ができます。もちろん、紹介会社の利用は無料ですが、資料請求後は紹介センターの営業対象の顧客として連絡を受けることになります。

 

代表的な紹介会社には、AGE+が運営する「住まいるケア有料老人ホーム紹介センター」と、ASFONが運営する「みんかい(民間介護施設紹介センター)」があります。どちらも入居者を紹介したときに施設の方から紹介手数料をもらっています。

 

・有料老人ホーム紹介センター「住まいるケア」

有料老人ホーム・高齢者住宅の情報サイト【住まいるケア】

 

・民間介護施設紹介センター「みんかい」

民間介護施設紹介センター「みんかい」 | TOPページ

 

老人ホーム紹介センターは、基本的に対面での相談と施設見学の調整、見学の付き添いまで行い、入居施設が見つかるまで無料でサポートを行います。入居が決まっても入居者が手数料を払うことはありませんし、紹介会社を利用したからといって施設に払う費用が増えることはありません。

 

ちなみに紹介センターが紹介した入居検討者が入居した場合、入居者1名のあっせん手数約20万円から30万円、月額のみの契約の場合は10万円程度です。また、入居金が1000万円を超える高級施設の場合は、入居金の3%程度を手数料として施設からもらうことが多いです。中には古くなったり事故があって入居者募集に苦労している施設の場合は紹介手数料を大幅に引き上げることもあって、ときには金欲しさに入居検討者に合わない施設を紹介することもあるので要注意です。

 

ⅲ.各老人ホームに直接請求

 

国内には、「ベネッセ」や「損保ケアネクスト」、「ベストライフ」など数百の施設を運営する大手企業もあれば1棟の老人ホームのみ運営している企業もあります。大手企業の老人ホームに電話をかけると大体は本社の相談窓口に繋がって、全国の自社施設を網羅して資料の手配をしてくれます。しかし、系列施設がない老人ホームの場合は一つ一つ連絡して資料を取り寄せる必要があるのでかなり面倒です。

 

自分(あるいは家族)に合った老人ホームが必ずしも大手の老人ホームではない可能性もあって、個々の施設に資料を取り寄せるとかなりの時間がかかります。そのために、資料の請求は老人ホーム検索サイトや紹介会社にて一括請求することをお勧めします。

 

3.大急ぎの場合は予約の上、早期の施設見学をオススメします。

 

老人ホームへの入居検討、実は対多数の方がケガや病気、認知症の悪化など、急な出来事によってはじまります。ゆっくり資料の検討をしている場合じゃないというときは、老人ホーム検索サイトや紹介会社で施設を見つけてすぐに見学に行きましょう。大体の施設は予約なしの突然の見学にも内部を見せてもらえますが、事前予約をしないと説明や案内が十分にできないことが多いです。当日や翌日の見学も承ることが多いので、事前予約でちゃんとした案内を受けることをお勧めします。

認知症の種類と認知症患者への接し方について

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1.高齢者の5人に1人が認知症、しかし理解は足りず

 

2015年1月の厚生労働省の発表によりますと、日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症患者とされています。団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人にも達し、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症患者になるとも言われます。

 

これだけ認知症は他人事とは言えない社会全体の課題になってきていますが、まだ日本では「認知症は恥ずかしいもの」といった後ろめたい考え方があって、認知症を早期に治療することができないことが多いです。また、ほとんどの人には認知症に関する知識と理解が足りず、認知症患者の異常な言動にひどく混乱し、家庭が崩壊するまでの大きな問題に発展するケースも後を絶ちません。

 

その為にも、家族や自身に認知症が発症する前から認知症のことを知り、認知症患者の気持ちを害することなく、スムーズに早期の認知症治療と予防などの対応が取れるようにする必要があります

 

2.認知症の種類はこんなにもたくさん、症状と対応も異なる

 

①アルツハイマー型認知症

認知症の中でも最も多い認知症、認知症患者の6~7割がアルツハイマー型認知症と言われています。この認知症の原因は脳の正常な神経細胞が壊れてしまって起こる脳細胞の萎縮と言われています。

 

アルツハイマー型認知症の初期症状(1年~5年ほど・人によって差が大きい)としては、物忘れが多くなります。しかし、物事を忘れていること自体を忘れてしまうことが多く、認知症の自覚が難しいことも多いです。病状が進行すると最近の記憶が残りにくく消えやすくなり、過去と現在の区別が明確にできずに混乱することが多くなります。そのために今では仕事などしていないのに、昔の習慣的記憶から仕事に行くと思い込んで家の外に出たり、夜間徘徊したりと異常行動がみられるようになります。症状が末期に入ると脳の萎縮によって言葉が話せられなくなったり、便意や尿意を感じたり表現できないために自立した排便ができなくなることも多いです。

 

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また、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の場合、糖尿病によって発症する可能性が倍近くあがるとの最近の研究報告もあります。

 

②脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳出血や脳梗塞などの脳血管の障害によって起こる認知症です。この認知症はアルツハイマー型認知症についで患者数が多く、認知症の約20%が脳血管性認知症と言われています。この認知症は、脳血管が詰まったり血圧によって膨張したりすることで、徐々に脳に与える物理的な負担が大きくなり、認知症や運動機能障害を引き起こします

 

脳血管性認知症は、高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病による血管障害が原因と言われています。そのために適切な服薬と適度の食事管理が必然と脳血管性認知症の予防に繋がります。また、脳血管性認知症の原因となる脳血管障害を早期に治療してリハビリを行えば、症状の進行を抑えることも出来ます

 

脳血管性認知症の初期症状としては、患者のあらゆる意欲の低下、不眠や不穏が目立ち、身体の不調にもつながりやすいです。また、その症状は変わりやすく、一時的な不調やうつ病と勘違いされることもあるので、早期の認知症診断と治療が遅れることもあります。脳血管性認知症は障害のある脳の部分が限定的で、認知症による身体機能(歩行機能や言語機能など)の障害も限定的に表れることが特徴です。しかし症状が進行しても時々正常な判断力が働くことも多く、場合によっては本人と家族の心的な負担が増すこともあります。なお、脳血管性認知症は血管性発作が起こる度に脳の機能が大きく低下する傾向にあります。症状が段階的に重くなります。

 

③レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、レビー小体というタンパク質が脳にたまることで発症する脳細胞の萎縮が原因と言われている認知疾患の一つです。レビー小体タンパク質はパーキンソン病の原因にもなる因子のため、パーキンソン病を伴うレビー小体型認知症の患者も少なくありません。

 

レビー小体型認知症は、パーキンソン病に似て体の動きが緩慢になる症状がみられ、歩行が不安定になったり全身の関節部が固くなってきて転倒しやすくなります。また、患者によっては怪しげな人や動物、虫などが昼間でも鮮明に見える幻覚を見ることがあったり、幻聴をを聞くこともあるので、突然の不安と異常行動の原因になります。また、睡眠時にみる夢や幻覚と幻聴の影響で踊りだしたり、徘徊したりする異常行動を引き起こすこともあります。レビー小体型認知症の患者は、病気が進むにつれてコミュニケーションが取れないことはありますが、時によって認知機能の起伏があります。認知機能が比較的に正常な時は話が通じるなど問題ないようにも思えますが、認知機能が悪くなる時は、会話はもちろん、周りの状況と環境の理解もできずに極度の不安と不満をあらわにするなど、気分や態度、行動がころころ変わります。

 

④前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症の多くは初老期に発症します。この認知症は他の認知症に比べて患者ごとの症状がかなり異なるもので、同じ前頭側頭型認知症とはいえ多くの認知疾患の総称として考えたほうがよいです。まお、この認知症は10年以上にかけてゆっくり進行することが多い

 

前頭側頭型認知症の症状の代表的な症状は、極端な性格や人格の変化です。きちんとしていた優しい方でも、自分の体や周囲の環境を清潔に保てなかったり、頑固になったり、暴力や暴言を行い、時には犯罪に対する意識が薄れて万引きなどを犯したり、家族を性的に暴行しようとしたりもします。また、その場の状況とは関係なない言葉を繰り返して言い続けたり、物事を指す言葉や文章の理解ができなくなったりして、自立した生活は不可能になります。

 

3.認知症の進行度合いと種類に合わせた服薬と対応に気をつけましょう

 

認知症はほとんどの場合、軽度な認知疾患から始まります。患者本人も自分の認知疾患にある程度は気づいていることは多いですが、自分の認知症を受け入れたくもないし、認めることはできません。このように、不安でいっぱいな初期認知症患者に対して無理矢理に病院診断に連れていくのは禁物です。患者本人からすると、完治しない認知症になるというのは癌(がん)になったときよりも絶望的な死亡宣告ほかなりません。そのためにも、最初から高齢者を「精神科」につ入れていくのも高齢者には非常に大きな心の傷になり得ます。最初は「老年科」や「物忘れ外来」、「心療内科」を選ぶ必要があります。また認知症患者本人のプライドを理解し、本人の不安と不満をなだめたうえで適切な診断や服薬に繋げていきましょう。

 

なお、上述したように認知症の種類はたくさんあります。そのために認知症患者の症状と合った薬は様々です。種類の異なる認知症患者に同じ薬を投与することで患者の心理がより不安定になったりとする副作用が発生したり、認知症の進行に効き目がなかったりすることもあります。そのために、一度は大きな病院で検査を受けて正確な認知症の病名を確認してもらうことが大事です。

 

さらに、認知症患者の「わからない」不安と不満は健康な人には理解しにくい異常行動として現れます。理解のできない言葉を繰り返したり、小動物のように周りの人に怯えてしまったり、物を投げたり人を殴ったり暴言を吐いたり、などなど様々です。介護者の家族にはとても耐えられるものではありません。しかし、認知症患者の理解できない異常行動にも患者なりには理由があります。その理由を理解しようと少しばかり気を配り、患者の話に合わせて言葉を交わし、リアクションをとってあげることが患者の心を落ち着かせて、結果的に介護者にも介護しやすい穏やかな状況になりやすくなります。

 

①レビー小体型認知症の患者の対応事例

私がお会いした患者さんの中にいたレビー小体型認知症の患者の場合、「空からなにが落ちてくる、ね、空からなにか落ちてくる・・・」と繰り返すこともありました。最初は家族の方も混乱し、無視し、暴言やケンカの毎日で、本人と家族ともに最悪な状況でした。

 

そこから老人ホームに入居して介護職員が毎日のように「そうだね~そうだね~すごいね~、どこ? と」やさしく話をきいてあげると気持ちが落ち着いてきて問題行動は完全に消えたこともあります。今では家族ともお互いに笑顔で時間を過ごせられるようになりました。

 

②アルツハイマー型認知症患者の対応事例

夜間に徘徊しながら服を脱いで奇声をあげる方がいました。家族の方も非常に困っていて、その後入居された老人ホームでも最初は非常に困っていました。しかし、よくよく本人を観察するとお腹の調子が悪いことが多く、便秘気味でイライラすることが多かったです。

 

実は便秘が夜間徘徊と脱衣と奇声の原因でした。言葉で伝えることができなかったが、便秘による不快感で夜起きてトイレに行くと思って徘徊し、便をすると思って服を脱いでいて、助けを求めて言葉にならない奇声を上げていたのです。そのために主治医に相談して便秘の薬を調整してもらって食事を変えたところでほとんどの異常行動がなくなりました。

 

このように、認知症患者の異常行動には必ず理由があり、その理由を理解して言葉をかけてあげたり、適切な薬を出してもらったり(ちゃんと指示通りに飲み)、生活習慣を見直すことで患者本人の気持ちが安らぐことが多いです。毎日介護をしている家族には今以上に心的負担のあるものかもしれませんが、これこそが長続きする認知症患者介護の基本なのです。

 

認知症患者の介護で戸惑い、疲れているみなさん、一度立ち止まって考え、地域の包括支援センターやケアマネ、グループホームや老人ホームに頼りながら、ほっと一息つきましょう。あまり頑張らないでくださいね。

『無届老人ホーム』って何? 入居してもいい? ダメ?

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1.増える高齢者の貧困、最後の砦は『無届老人ホーム』

 

急速に増えていく日本の高齢者、今では高齢者の為の様々な介護サービスや関連商品も次々と開発され、身体の不調のある高齢者の暮らしも昔に比べると大きく改善されました。しかし、高齢者の暮らしを支える介護、医療、生活の様々なサービスは、言うまでもなく有料です。介護と医療は介護保険、医療保険で対処するとしても、公的保険の自己負担金(1割~3割)と食費や家賃、自費の生活サポート費を考慮すると、とても年金だけでは生きていけません

 

実際に老後のための貯金や収入が足りず、生活保護を申請する高齢者も年々増えています。2016年3月時点では生活保護受給の高齢者世帯が過去最高の約82万6656に上り、直近の20年間で実に2倍に増えました。こんなにも高齢者の貧困問題は深刻化しています。このような時代の背景から生まれた介護施設が『無届老人ホーム』です。

 

無届老人ホームは、その名前の通り行政に届け出ていない無認可の老人ホームのことを言います。無届老人ホームは、政府が定める居室の広さや介護と医療の人員体制、各種設備は政府が決めた基準は満たしていないことが多いですが、月額費用が10万円以下(平均して10万5000円/野村総合研究所調査)に収まることも多いために経済的に困窮した高齢者世帯の最後の砦になっています。この無届老人ホーム、厚生労働省の調べによると2014年10月の961ヵ所から2016年1月1650ヵ所と、2年足らずで1.7倍にも急増しています。これだけ需要が高まっているとの証でもあります。

 

2.『無届老人ホーム』が届出を出さない理由

 

行政に届け出ている有料老人ホームは、行政が定める介護施設の基準を満たす必要があります。居室の広さが13㎡(約7畳)、廊下の幅、段差のない構造、火災用のスプリンクラー、介護と医療の体制など、全部の基準をクリアするには相当な金と労力が要ります。また、介護付き有料老人ホームの場合は入居者3人に対して有資格者の介護または医療スタッフが常勤換算で1名以上いなければいないなど、厳しい基準になっています。

 

行政に届出を出していない無届老人ホームは、このような条件を守らなくとも入居費用を安くすれば入居者はいくらでも入ってくるし、収益も生まれるから、面倒で金のかかる行政指導を避けて届け出ないのです。行政指導に対応するための人件費だけでも重く圧し掛かってしまいますからね。

 

3.『無届老人ホーム』での生活はどうなの?

 

『無届老人ホーム』という名前からは、運営事業者が行政に届出を出していない情報しか読み取れません。行政に届けだされていない理由も、単なる行政指導が面倒だからといった理由でしっかりしたサービスを提供しているところもあれば、低所得の高齢者でも入居できるように居室の広さだけを行政が定める基準よりも狭くしているところもあり、また荒稼ぎのために所狭しと並べられたベッドに高齢の入居者を並べて(1人あたり2畳程度の空間)で運営する無届老人ホームもあります

 

そのために、無届老人ホームだからといって全部ダメな介護施設ともいえない状況で、経済的な理由によって無届老人ホームしか入居できない場合は施設をよくみて慎重な判断をする必要があります。中には無届老人ホームでも、入居された方は満足した生活を送っている素敵な無届老人ホームもあるので、なんとも一言では評価しにくいものです。

 

4.施設入居の検討は、まず見学から!

 

上述しているように、無届老人ホームといっても全部同じようなものではありません。高い有料老人ホームよりは住環境や介護体制に不足がある可能性も高いですが、経済的な理由からでも、今までの生活環境からでも、入居者に合う施設と合わない施設というものは必ずあります。なので、まずは気になる施設に見学予約の上でじっくり見て聞いて検討することが大事です。介護に悩まれるみなさん、まずは見学に行きましょう。

本当は言えない、オススメの大手有料老人ホームブランド10選

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1.老人ホーム入居相談員の選ぶオススメの老人ホーム10選

老人ホームの入居相談員としての経験から、安心して紹介できる大手老人ホーム運営会社10社の老人ホームブランド(名前)を紹介します。本当は会社の良いところも悪いところも、名指しではなかなか言えない立場ではありますが、ここならば良い検討ができそうだ!と思う会社情報を10社揃えました。どれだけ良い施設でも、入居検討者本人と家族に合うか合わないかは別問題です。しかし、この10社の老人ホームなら入居を真剣に検討する価値があります。

 

 

順番は施設の良さとは関係ありませんのでご注意ください。

なお、関わったことがあって情報のある老人ホームのみ記載していますのでご了承ください。

 

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① グリーンライフ

運営会社:グリーンライフ株式会社

ホームページhttp://www.greenlife-inc.co.jp/

エリア:北海道  宮城  茨城  群馬  埼玉  千葉  東京  神奈川  岐阜  愛知  大阪 兵庫  岡山  広島  山口  福岡  大分  鹿児島

施設数:58施設

オススメ理由医療依存度が高い方でもほとんど入居を断ることなく対応しています。施設スタッフが経験の少ない医療処置が必要な高齢者の場合、医療対応のためにスタッフの追加配置が必要だったり死亡事故の恐れがあったりして入居を断る場合が多いです。しかし、グリーンライフは経験したことのない医療対応でも、あきらめずに対応します。一人の新たな入居者のために施設長が自ら医療研修に通って対応する姿には感動すら覚えます。とにかく入居者の満足度の高い老人ホームです。認知症患者の心のケアもグリーンライフの大事なポイントです。

 

② 未来倶楽部

運営会社:株式会社未来設計

ホームページhttps://www.miraiclub.jp/

エリア:埼玉  千葉  東京  神奈川

施設数:34施設

オススメ理由:創業者の会長が自分の母の為に作った老人ホームです。会長は入居者を本当の家族だと思って今でも毎週施設を訪れて入居者の誕生日を祝ってあげるなど、アットホームで頼れる老人ホームです。他の老人ホームでは施設職員とのトラブルや不満が解消されずにモヤモヤとする方も多いですが、未来倶楽部は創業者の会長や社長も施設内のすぐそこにいるので入居者の声が経営層までストレートで届きます。もちろん施設スタッフもとても勉強熱心で、丁寧な対応をしています。

 

また医療連携が強いため、普段からの医療対応から看取りまで安心できるところがポイントです。他の老人ホームで入居を断られ続けたアルコール依存症の方や激しい問題行動のある認知症患者、(老人ホームのメリットの少ない)余命1カ月の方でも受け入れて高齢者本人と家族の満足できるケアを行う姿には強い信頼感を覚えました。ただし、医療依存度の高い方でも入れるので施設で亡くなられる方も多く、入居者の入れ替えが頻繁な方です。

 

 

③ ツクイ・サンシャイン

運営会社:株式会社ツクイ

ホームページhttps://www.tsukui-sunshine.net/

エリア:宮城  福島  茨城  栃木  埼玉  東京  神奈川  新潟  長野  静岡  愛知 大阪  岡山  愛媛

施設数:31施設

オススメ理由:とにかく入居者が健やかで楽しく過ごせられるような生活環境の構築に力を注いでいます。問題行動のある認知症患者の場合でも、認知症による不安や不満をやわらげながら満足な生活を送って頂くケースも多いです。特にツクイのスタッフが入居者に寄せる想いの結晶ともいえる『夢ケア』というものがあります。夢ケアは入居者の人生最後の夢をかなえるためのもの。一人では移動すら難しい方でも人生の最後に海での思い出を作りたいといった夢を叶えるためのリハビリ、栄養、介助、看護など専属スタッフが集まって夢を叶える姿には感動しました。自分の親にもぜひやってあげたいものです。ツクイは地域の医療機関との密な連携で普段からの医療・検診体制から看取りまで安心できるところもポイントです。また、老人ホームとしては珍しく、食事のメニューが色々と選べられるのが嬉しいです。

 

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④ ニチイケアセンター

運営会社:株式会社ニチイ学館

ホームページhttp://www.nichiigakkan.co.jp/service/care/index.html

エリア:北海道  宮城  秋田  山形  福島  茨城  埼玉  千葉  東京  神奈川  新潟 長野  岐阜  静岡  愛知  京都  兵庫  奈良  和歌山  山口  福岡  熊本

施設数:68施設

オススメ理由:介護付き有料老人ホームの中では手ごろな月々20万円(介護・医療実費含む)くらいの施設が多く、介護サービスも丁寧で手厚いです。施設スタッフの対応にも(もちろん常に忙しいけど)ゆとりがあるように思える丁寧な対応です。全国に施設がある老人ホームの中ではかなりコスパの良い施設です。またニチイケアセンターは自社に介護や福祉関連企業が多く、他の老人ホームよりも福祉用具が安く借りられるとのこと。ただし、ニチイケアセンターは良い施設であるために常に満室で待機者が多いのが入居の難点です。

 

⑤ リアンレーヴ

運営会社:株式会社木下の介護

ホームページhttp://www.kinoshita-kaigo.co.jp/

エリア:埼玉  千葉  東京  神奈川  山梨

施設数: 83施設

オススメ理由:老人ホームは常に入居者の介護と医療対応でバタバタしていて生活の中の細かなリクエストには迅速に対応できないことも多いです。リアンレーヴは入居者の声が施設長などの管理職に届きやすく、生活の中の細かな要望にも応えやすい点が嬉しいですね。また毎月の外食イベントはホテルの豪華ランチにいくこともあって、入居者同士で盛り上がったり楽しんだりするところが素敵でした。とても特別な何かをしているわけではないですが、入居者の声に常に耳を傾けて尊重し、対応するところから入居者の満足度は高いです。しかし本人の意思を第一にしている為か、認知症患者の入居拒否の場合でも「それじゃ仕方ないですね」と入居までのサポートが弱いと感じることがあるので、もう少し踏ん張ってほしい気持ちもありますね。

 

⑥ フローレンスケア

運営会社:工藤建設 株式会社

ホームページhttp://www.good-care.jp/

エリア:東京  神奈川

施設数:10施設

オススメ理由:フロアごとに生活環境を分けて入居者一人ひとりに担当を設ける「ユニットケア方式の居室担当制」を採用していて、丁寧な対応が利用者に大好評です。生活リハビリから専門リハビリまでリハビリが非常に充実しているので、リハビリのために短期入居(ショートステイ)をする方も多いです。その短期入居がきっかけで長期入居(終身契約)する方や、その口コミで入居を検討することも多い、地域で好評な老人ホームです。

 

⑦ SOMPOケアラヴィーレ

運営会社:SOMPOケアネクスト株式会社

ホームページhttp://lp.sompocare-next.jp/

エリア:埼玉  千葉  東京  神奈川  愛知  大阪  兵庫  広島

施設数:117

オススメ理由:SOMPOケアラヴィーレは旧ワタミの介護が合併により名前が変わった老人ホームで、老人ホーム特有の施設感があまりなく、ご飯がおいしく、認知症の対応が丁寧で上手なのが嬉しい施設です。決して医療体制が弱いというわけではありませんが、イベントが多いため元気な方には特に楽しめられるイキイキとした老人ホームです。毎年みんなで温泉旅行に行ったり目の前で握った寿司を食べたり揚げたての天ぷらを食べたりと、普通は老人ホームでなかなかできないことをやってしまうところが凄いです。気難しい億万長者の方でも入居できた、安心感のある老人ホームです。

 

⑧ イリーゼ

運営会社:長谷川介護サービス 株式会社

ホームページhttps://www.irs.jp/

エリア:北海道  埼玉  千葉  東京  神奈川  長野  兵庫  沖縄

施設数:98施設

オススメ理由入居金0円、月額14万円台と、有料老人ホームとしてはかなり低価格の施設でありながら(イリーゼ湘南ひらつかのケース)、設備や人員体制が素晴らしいです。なぜか運営会社は自社のアピールをあまりしませんが、なかなかコスパの良い施設であることは間違いないです。自社で介護職員の人材事業を営んでいることもあって介護職員の採用コストが減らせられるのが低価格な料金体系を実現できる主要因でもあります。ただし、手厚い生活支援サービスを抑えて低価格な料金体系を実現しているので、細かな生活の支援を希望する方は実費がかさみやすいことがあるので要注意です。また、過度に入居者の生活に関与しないので、密な人付き合いが好みでない方にはお勧めです。

 

⑨ ベストライフ

運営会社:株式会社ベストライフ

ホームページhttp://bestlife.jp/

エリア:北海道  宮城  群馬  埼玉  千葉  東京  神奈川  石川  山梨  岐阜  静岡 愛知  三重  京都  大阪  兵庫  島根  岡山  広島  福岡

施設数:168

オススメ理由:安いところだと入居金280万円で月額12万円台から(ベストライフ戸田のケース)と、有料老人ホームの中では低価格で、生活に必要な基本的なサービスの料金込みといった安心感のある料金体系です。全国に168の施設がありますが、他の大手老人ホーム運営会社とは少し違って、施設ごとの方針や雰囲気が強く現れる老人ホームです。そのために基本的な人員体制や料金体系以外の施設の雰囲気とスタッフの対応には同じベストライフの老人ホームでも差が大きく現れます。そのために実際に施設に見学に行ってみないと分からないのが難点。しかし確実にコスパの良い施設なので、予算感にあっていれば一度は入居を前提に検討をお勧めする老人ホームです。

 

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⑩ ヒルデモア

運営会社:東京海上日動ベターライフサービス株式会社

ホームページhttp://www.hyldemoer.com/

エリア:東京  神奈川  長野  京都

施設数:11施設

オススメ理由:高級施設だけど住み心地の良い素敵な生活空間で、介護、医療、食、運動、など、全てにこだわった完璧な老人ホームです。特に食に関しては日本一の老人ホームだと確信します。お米も取り寄せた3種類のブランド米を調合し、味噌も取り寄せ、漬物は京都の老舗から調達、和食の基本に手を抜かない徹底ぶりです。嚥下(えんげ)、咀嚼(そしゃく)に障害がある方のための食事にも完璧に対応していて、普通なら不味いはずのミキサー食でさえ高級料理店で食べるおいしさでした。入居者がご逝去される前日まで食べる喜びを楽しめられたとの家族からの感謝も挨拶も後を絶ちません。

 

また、十分すぎるほどのゆとりある人員体制と医療体制で、家族のケアまで徹底する看取りが特長です。家族の死は、頭ではわかっていてもすんなり受け入れるものではありません。そのために入居者の死後に家族の精神的な疲労が増す場合も多いです。しかし、ヒルデモアは施設スタッフが家族と一緒に安らかな最期と見送りをするので、家族からも「ここに入居してよかった」との話をよく聞きます。また、他の老人ホームでは見たことのない収納スペースの大きさが魅力的です。

 

身寄りがないと介護施設には入居できない?!

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1.老人ホーム入居には『身元引受人』が必要

 

高齢者の一人暮らし、老老介護の夫婦の二人暮らしが急速に増加しています。高齢者独居世帯には結婚をしていない方も多く、頼れる家族もいないために介護保険の利用や生活保護の申請などもできずに極貧生活を送っている方もいます。また、そもそも本人が介護の必要な状態でありながら配偶者の介護をしている、いわゆる「老老介護」も増えています。老老介護はほとんど長続きせず、介護をしていた高齢者が健康を大きく崩して配偶者よりも先にご逝去されるケースも後を絶ちません。

 

さらに、「老老介護」には身体的な負担以外にも認知症患者の高齢者が認知症患者を介護している「認認介護」も含まれていて、服薬管理はもちろん、介護サービスや医療機関の適切な利用も難しいことが多くあります。「認認介護」の場合は火事などの事故やケガ、薬の誤飲などによるリスクも高まるので、本来であれば「老老介護」よりも「認認介護」のほうが生活のサポートが必要なことも多いです。

 

このように人の手が必要な高齢者の介護を、家族が行えない場合は老人ホームの入居を検討することも多いですが、ほとんどの老人ホームは入居時に「身元保証人」が必要です。しかし高齢者の場合は「結婚をしてないので家族がいない」、「子供がいない」、「家族と疎遠」、「家族も高齢」、「家族も認知症」など、「身元引受人」をお願いできないことも非常によくあります。そもそも頼れる人がないために施設入居を検討するのに、また頼れる人がいなくて施設入居ができないといった悲しいことも多いのです。

 

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2.『身元引受人』が必要な理由

 

一般に老人ホームに入居するときは「身元引受人」と「保証人」が必要です。「身元引受人」は、入居者が病気やケガ、自己、死亡、支払いが滞ったときの連絡や協議を行う相談相手で、「保証人」は、入居者が月額料金の支払いができなくなったときに入居者に代わって月額料金を払う連帯保証人です。普通は、同じ人が「身元引受人」と「保証人」を兼務することが多いですので、実質は「身元引受人」=「(身元)保証人」なのです。

 

高齢者は、様々な病気を患って身体機能も弱っているために、肺炎や転倒による骨折などで緊急入院をすることもあれば、施設内でご逝去されることも非常に多くあります。高齢者の身に何かが起こると施設側は「身元引受人」に連絡をとって来てもらったり確認と許可をとったりします。時には認知症の高齢者が暴力的行動で周りの人に迷惑をかける場合もあり、このような場合でも施設は「身元引受人」に相談し、協力をお願いすることもあります。まるで24時間保育員に子供を預けた保護者のように、「身元引受人」は何かがあればすぐに駆け付ける「保護者」の役割を果たします。

 

さらに「身元引受人」は、入居者がご逝去した後のご遺体の引き受け、死亡届の提出や遺品の整理、返金予定の入居金がある場合は入居金の受け取りなどの諸般の事務手続きも行う事になります。このように介護施設入居者の「身元引受人」は、かなりの義務と責任を負うので軽い気持ちではお願いできません

 

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3.『身元引受人』を頼める人がいないときは?

 

介護施設への入居相談の時に「身元引受人がいないけど大丈夫?」といった相談は度々あります。まだまだ家族がいなくて「身元引受人」がお願いできない方よりも、家族との関係性のために「身元引受人」のお願いができない場合が非常に多くあります。家族の事情というのは複雑なもので簡単に解消するものではないので、家族関係が改善して「身元引受人」問題が解決される割合はゼロに近いです。

 

このようなときに、月額料金に対して連帯責任を負う「身元保証人」を代行してくれるNPO団体や法律事務所、公益社団法人、民間企業があって、そのようなサービスを利用する方も徐々に増えています。老人ホームの入居条件に「身元保証人相談可」となっていても「身元保証人」が不必要なわけではなく、有料で「身元保証人」の代行支援を行っている企業や団体などを紹介してくれるといった意味なのです。

 

 

【身元保証人を代行する団体例】

 

〇四つ葉のクローバー協会

http://www.4clover.org/

 

〇全国シルバーライフ保証協会

http://sl-g.jp/

 

身元保証人を依頼するには、一定の費用がかかります。

 

【終身連帯保証契約の例】

116万5000円(終身)

(入会費55万円+連帯保証費60万円+事務手数料1万5000円)

 

【3年更新の月払い契約の例】

初期費用26万5000円+月額1万5000円

(入会費25万円+月額連帯保証費1万5000円+事務手数料1万5000円)= 3年で約80万円、4年で118万5000円かかる。

 

上記の費用は一例で、保証人の代行を行う団体、企業によっては費用が大きく変わったり保証内容が異なる場合も多いので、契約内容を詳しく確認したうえで契約を締結する必要があります。また、このような団体、企業は身元保証以外にも葬儀支援(約35万円)、納骨支援(20万円)、遺品整理(15万円~)も引き受けることがあります。

 

制度やサービスを賢く利用して安心の老後を送りましょう。

 

大きな老人ホームと小さな老人ホーム、メリットとデメリットについて

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1.老人ホームの生活環境は規模によっても変化する

 

進む高齢化と共に徐々に増えていく老人ホーム入居者の高齢者。老人ホームは終の棲家として高く期待されています。しかし、老人ホームは病院のように一時的に治療や療養のために滞在する場所ではなく、自宅に代わって最期までの生活する空間であるために入居してから後悔したり転居したりすることもあります。老人ホームへの入居は高い入居金を払って入居する場合も多く、諸般の手続きも少なくないために、転居することはなかなかに難易度の高いものです。

 

老人ホームの生活環境は、運営会社の方針や医療機関との連携、人員体制、入居者たちの介護度や性格など、様々な要素にも影響を受けます。その中でも施設の規模(部屋数)によって生まれる環境の違いも確かにあります。大きな老人ホームでは200人を超える方が入居していたり、小さな老人ホームでは入居者が50人を下回ったりと規模に違いがあります。ただ老人ホームは、大きいから良い、小さいから悪いといった一元的な考え方は間違いです。規模による老人ホームのメリットとデメリットについて少し説明します。

 

2.大規模老人ホームのメリット&デメリット

 

【メリット】

 

ⅰ.医療体制が手厚いことが多い

老人ホームには提携先医療機関から定期的に訪れ、入居者の検診や治療、医療相談に応じています。大体は科目別に2週間に1回ほどの訪問が多いのですが、入居者が多い施設は全ての入居者の健康を管理するために毎週医療スタッフが訪問します。普段は決まったときに診察や医療相談をしますが、医療スタッフが頻繁に訪れる環境では体調に不安があるときに長い間待つことなく医療の相談ができるメリットがあります。

 

また、入居者の中には施設の提携医療機関以外の医療機関と契約している場合があって、その医療スタッフが施設に訪問した時に他の入居者の医療相談に応じてくれる場合があります。そのために施設によっては希望があれば週に3回以上の医療相談や治療ができる場合もあります

 

ⅱ.職員の柔軟な対応ができる

老人ホームは入居者の安全で安心な環境を維持するために適正な人員体制を構築していることが多いです。例えば介護付き有料老人ホームであれば入居者3人あたり1人以上の有資格者(医師、看護師、介護福祉士など)が常勤する必要があります。入居者が多ければ多いほど常勤のスタッフは増えます。

 

たとえ、入居者が210人の介護付き有料老人ホームでは常勤のスタッフが必ず70人以上いる計算になります。資格のない送迎担当者や清掃担当者、調理担当者を含めると、その数はさらに膨らみます。また入居者が60人の介護付き有料老人ホームでは常勤のスタッフは20人以上になります。大きい老人ホームでは常勤のスタッフの絶対数が多いために小さな老人よりも入居者の特別なリクエストに応えられる余裕がある場合が多いこともあります。

 

ⅲ.レクリエーションやクラブ活動など、娯楽イベントが豊富

老人ホームでは頻繁に外出しない高齢者も多く、施設内のイベントや催し物などを多く設けています。生け花やそば打ち体験、カラオケ大会、麻雀大会、書道教室など、様々なイベントやクラブ活動が開かれます。入居者の多い老人ホームでは、同じイベントやクラブ活動に参加できる人数が一定数確保しやすいので小さな老人ホームよりも多彩なイベントの企画ができるようになります。

 

また、老人ホーム入居者の男女比を見てみると女性が多いケースがほとんどです。そのために、時に男性の入居者は老人ホームの人間関係に馴染めず、女性中心のイベントやクラブ活動に参加したがらないこともあります。しかし規模の大きな老人ホームでは男性入居者が集まって麻雀を打ったり、囲碁を打ったり、男性同士で集まってカラオケ大会を行ったりとクラブ活動が楽しめられる機会が増えることもあります。

 

【デメリット】

 

ⅰ.施設内が大きな社会であるために馴染みにくい

老人ホームに入居する高齢者は、入居直前まであまり多くの人とかかわっていなかった方が多く、突然大きな老人ホームに入居しては心理的な恐怖感と不安が大きいこともあります。人見知りの方には大きな老人ホームが合わない可能性があるので要注意ですね。

 

小規模老人ホームのメリット&デメリット

 

【メリット】

 

ⅰ.人間関係が築きやすい

上述しましたように、人は歳を取るにつれて人間関係が狭まって老人ホームに入居する年齢になると一部の家族としかコミュニケーションをとらない状態になりがちです。そのために体調を崩して住み慣れた家から離れるといった不安の中で施設に入居するときは、できるだけ小さなコミュニティのほうが心を開いて交流しやすいことが多いです。

 

ⅱ.スタッフとのコミュニケーションが容易

若い人もそうかもしれませんが、高齢者は特に馴染みのスタッフに声をかけてもらうときや、介助を受けるときに安心感を覚えます。大きな施設だとスタッフも数も多く、入れ替わりも激しいことが多いです。しかし、小規模の老人ホームだと入居者とスタッフがより親身に接することができるので、結果的に入居の満足度が上がることが多いです。また、スタッフは入居者の小さな変化に気づきやすくなるために、病状の変化や心のケアにも早期に対応できるメリットもあります。

 

【デメリット】

 

ⅰ.入居者の特別な要望に応えづらい

老人ホームの入居者が少ない分、施設スタッフも少ないです。そのために一人のスタッフの欠員は入居者のケアに大きく響きます。このような理由から、入居者の外出や通院などの付き添いに施設スタッフが対応することはなかなか難しいです。

 

ⅱ.介護度によるフロアー分けが難しい

大きい施設の場合は、移動の負担が大きい重介護度の入居者を食堂のあるフロアーに寄せたり、認知症の方々のフロアーを別に設けたりすることがあります。まだ身体が元気で認知症のない入居者は、寝たきりの方や認知症の方と同じ空間で過ごしたがらないことも多いです。そのために小規模の老人ホームでは、まだ元気な入居者の心的ストレスが大きくなる可能性があります。

 

3.施設の特徴は目で見て確かめること

 

老人ホームは、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームのような種別、運営会社、規模、築年数によっても生活環境が大きく変わります。もちろん、施設の規模によっても一般に生じる違いがありますが、基本的にはそれぞれの老人ホームの特徴が強く現れます。老人ホームに入居を検討するのなら早めに見学に行き、自分の目で確かめながら老人ホームの担当者に色々と聞いてみることですね。

高齢者に多い病気のこと、知っておこう!(後編)

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前編(高齢者に多い病気のこと、知っておこう!(前編) - 高齢者介護のあれこれ)に続き、高齢者に多い病気、治療法、医療器具について簡単に紹介します。

 

1.痰の吸引(たんのきゅういん)

 

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痰の吸引は、口腔内、のど(咽頭、喉頭)、鼻腔、気管、気管支などに溜まっている分泌物(主に痰ですね)を、吸引器を利用して除去することをいいます。痰が気道内にたまると呼吸困難や窒息の原因になるために、場合によっては窒息死につながります。また、痰などの分泌物が誤嚥(ごえん:間違って気道に入る)すると細菌などを増殖させることによって誤嚥性肺炎を引き起こすこともあります。

 

痰の吸引は医療行為であるため、基本的には医師や看護師などの医療スタッフのみ行う事ができます。最近では介護スタッフでも研修を受けることで痰の吸引ができる場合がありますが、研修期間が長いことからあまり普及していません。そのために24時間随時痰の吸引が必要な高齢者は普通の老人ホームの入居ができないことも多く、医療機関や24時間看護師が常駐する施設に入居することが多いです。

 

2.在宅酸素療法 / HOT(ざいたくさんそりょうほう/ほっと)

 

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在宅酸素療法とは、病院ではなく自宅で酸素を吸引する治療法です。病院に入院している患者の場合、病状が安定していても血液中の酸素量が少なくなると退院できなくなることがあります。この時に自宅での生活ができるようにするために在宅酸素療法を利用します。

 

在宅酸素療法とはいえ、病院で使っている人工呼吸器のようなものではなく、鼻の周りに垂らしたチューブから高濃度の酸素を送り込むことから普段の呼吸でも多量の酸素を吸い込められるようにするものです。在宅酸素療法の対象になる患者は、肺気腫(はいきしゅ)、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)、肺線維症(はいせんいしょう)、肺結核後遺症(はいけっかくこういしょう)、など呼吸器疾患が大半を占めます。そのほかにも、心疾患や神経疾患、ガンなどの場合でも利用されることがあります。

 

3.在宅人工呼吸器 CPAP & BiPAP(ざいたくじんこうこきゅうき シーパップ & バイパップ)

 

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在宅人工呼吸器は、患者自身の力で安定した呼吸ができない場合に、強制的に酸素を送り込んだり、呼吸のテンポに合わせて呼吸を助けたりする医療機器です。在宅酸素療法よりも呼吸に問題を抱える患者が利用するもので、呼吸以外では入院する必要のない患者には自宅復帰に大いに役立ちます。

 

在宅人工呼吸器はいくつか種類がありますが、CPAPとBiPAPが代表的です。CPAPは睡眠中無呼吸症(閉鎖性睡眠無呼吸/OSA)で利用される比較的に簡易なもので、継続的に酸素濃度の高い空気を流し込む医療機器です。その反面BiPAPは、中枢性睡眠無呼吸症(CSA)、慢性閉鎖性肺疾患(COPD)、成人呼吸障害症候群(ARDS)、呼吸不全など、比較的に重い症状に患者が利用します。BiPAPは急に呼吸が止まった時や、息を吸って吐くタイミングに合わせて強弱をつけて酸素濃度の高い空気を流すのでCPAPよりも呼吸しやすく、より重い呼吸障害の方にも利用してもらえます。気管切開の患者の場合はBiPAPを利用する患者が多いですね。

 

4.ストーマ・人工肛門・人工膀胱(すとーま・じんこうこうもん・じんこうぼうこう)

 

ストーマは消化器官や尿路の疾患によって、便または尿を出せなくなった患者が利用する医療処置です。ストーマを利用する患者はオストメイトと呼ぶことあります。ストーマは、消化管ストーマと尿路ストーマの2つに分けますが、消化管ストーマは下腹部に大腸からの便を出す人工肛門、尿路ストーマが人工膀胱といいます。人工肛門は大腸を、人工膀胱は尿管を加工して下腹部にだし、便や尿を自動的に専用のパウチに集めて処理します。本来普段の生活から介護や生活支援が必要な高齢者の場合は障害手帳が取得できることがあり、介護タクシーや医療費が事実上無料になることがあります。

 

5.動脈硬化によるカテーテル手術Ⅰ(どうみゃくこうかによるかてーてるちりょうⅠ)

 

 

動脈硬化のカテーテル手術は、動脈硬化による血管の狭窄(きょうさく)などの合併症が重い場合に行います。手術は、カテーテルと呼ばれる細い管状の医療器具を血管から挿入して行う「カテーテル手術」、動脈硬化などで詰まったり狭くなったりした血管の迂回路(うかいろ)を作るバイパス手術(バイパスは脇道という意味)があります。カテーテル手術は、太ももの付け根、手首、ひじなどに小さな穴をあけるだけで、血管に細いカテーテルを入れて異常のある動脈の手術ができるので身体の負担が少ないです。

 

6.動脈硬化によるカテーテル手術Ⅱ(どうみゃくこうかによるかてーてるちりょうⅡ)

 

カテーテル手術は大きく、『ステンド手術』と『バルーン手術』の2種類があります。正式ではステンド留置療法と呼ばれるステンド手術は、ステントと呼ばれる金属でできたメッシュ状(網状)の筒(つつ)をバルーン(細長い医療用の風船です)にかぶせて血管に挿入します。その後、血管が細くなった場所に到達するとバルーンを膨らませて金属製の筒で血管内を広げ、バルーンは引き抜いて外します。これで血管内が広まった状態が確保できるので血流が円滑に流れるようになります。

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バルーン手術は、溜まった老廃物によった狭くなった血管のところに、細いワイヤーを利用してバルーン(風船)を送り込んで膨らませ、血管自体を広くすることで血流を円滑にします。

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7.心不全(しんふぜん)

 

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心不全とはなんらかの原因(心筋梗塞、弁膜症、高血圧など)で心臓の障害が起こり、それにより全身の血液に十分な酸素が送りこけない状況のことを言います。これは病気そのものではなく、病気による症候群を意味します。心不全は飲み薬による治療を行う事が多いですが、致命的な不整脈がある場合は埋め込み型除細動器(身体に埋め込んで心臓麻痺を引き起こす「細動」を除去するもの)を埋め込む場合もあります。また、飲み薬では十分に治療できないこともあり、特殊なペースメーカーを埋め込んだり、人工心臓や心臓移植が必要な場合もあります。心臓部分を外科的に開く手術の場合は、回復とリハビリ、退院まで数週間以上かかります。

 

8.心臓ペースメーカー(しんぞうぺーすめーかー)

 

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心臓ペースメーカーは、心臓の筋肉に微弱な電気刺激を与えることで、心臓の正常な心拍運動を助ける医療機器です。心臓から出た心拍のシグナル(信号)をペースメーカーが感知し、ペースメーカーは心拍が不安定な場合に微弱な電流を流して不規則な心臓の動きを安定化します。ペースメーカーの本体は楕円形(だえんけい)で、大きさは種類によって異なりますが、おおむね直径4~5cm、厚さ5~6mmくらいです。

 

9.脱水症状による老衰(だっすいによるろうすい)

 

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暑さと喉の渇きが感じにくい高齢者は、夏場にエアコンなどの冷房設備をあまり利用しないことが多く、脱水症状や熱中症になることが多くあります。人は生きるために1日に約2リットルの水分が必要で、食べ物に含まれる水分を含めると1日に2.5リットルもの水分を摂る必要があります。1日に身体から抜けていく水分は、摂った成分量によっても影響しますが、息や汗で失われる水分は1日に約2.5リットルもあります。つまり、人は1日に2.5リットルの水分を摂ってはじめて体内の水分量が安定に保てるのです。

 

身体の中の水分の割合は、子供で約60~70%、成人になると約60%、高齢者になると約50%と加齢と共に減っていきます。そのために同じくらいの汗を流しても子供よりは高齢者のほうが脱水症状に陥りやすく、高齢者はこまめな水分補給で十分な水分を摂る必要があります。脱水症状や熱中症は十分な水分を摂って安静にすれば大体は回復しますが、症状が発症したときに転倒することで骨折や脳震盪(のうしんとう)など、重介護状態のきっかけにもなるので十分に注意する必要があります。

 

10.圧迫骨折(あっぱくこっせつ)

 

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圧迫骨折は、外部の衝撃や椎骨(ついこつ:背骨を構成する骨)の弱まった状態で脊髄の椎体(せきずいのついたい:背骨を構成する骨)に力がかかり、骨折を起こして潰れる病気のことを言います。胸椎(きょうつい:背骨の中心部にある12個の骨)と腰椎(ようつい:腰の部分の5個の骨)を中心に発症することが多いです。

 

高齢者の多くは骨粗しょう症を患っていて骨が弱く、軽い力が加わっただけで骨折する場合もあれば、ほとんど外圧がかからなくても骨折することがあります。また高齢者の場合は室内で尻もちをついたくらいであっても骨折した可能性があるので、痛みを訴えたら脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)を疑ってみる必要があります。

 

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最近では折れたり潰れたりした脊椎に、背中部から椎体内に骨セメント(メチルメタクリレート:人工骨の材料のひとつ)を注入して行う治療法もあって大きな手術なく直せる場合もあります。しかし一般的な入院期間の場合は高齢者の場合はおおむね3か月程度が多く、退院後も弱った筋力のためにリハビリ病棟に再入院する場合も少なくありません。

 

前編から後編まで20つの病気やケガ、治療法などを紹介しました。高齢者になると様々な身体の不具合が発生してしまいますが、健やかな老後のためにも普段からの健康管理には十分に気をつけましょう。