高齢者介護のあれこれ

介護相談員の在宅介護ガイド

高齢者の低栄養防止の救世主、乳和食とは?

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1.低栄養と生活習慣病で苦しむ日本の高齢者

 

世界的な長寿国で名高い日本!男性の平均寿命は81歳、女性は87歳に上ります。その原因には日本の健康的な食文化である『和食』も大いに役立っているとのこと。最近では和食が世界無形文化遺産に指定されたり、世界の高級レストランで和食を取り入れたり、和食の名店が世界的なレストラン格付けのミシュランガイドに次々と掲載されるなど、その人気は上りウナギです。

 

しかし、日本の高齢者の37%が低栄養状態、35%が低栄養の予備軍、合計では72%の高齢者が栄養問題を抱えて不健康な毎日を過ごしていて、実はこの原因がなんと『和食』であるとも指摘されます。和食は脂肪分が少なめなので摂取カロリーが少なく、野菜中心の副菜が豊富なミネラルと食物繊維を補っています。現代に生きる栄養過多の若い人には健康的で美味しい和食ですが、食が細って身体の弱った高齢者には栄養不足の主要な原因になってしまいます。

 

しかも和食は、みそ汁やトン汁、塩焼きの魚、漬物、など、塩分の量があまりに多いです。そのために、高血圧や糖尿病など、様々な生活習慣病で塩分の制限をしなければならない高齢者にとっては、もっとも食べてはいけないものが和食なのです。しかし長年楽しんできた和食をあきらめるのは難しいもの。和食を楽しみながらも減塩を意識する必要があります。

 

2.高齢者の和食愛を救う『乳和食』の登場

 

① 乳和食とは

乳和食とは、味噌や醤油などの伝統的な和食調味料に「コク」や「うま味」の豊富な牛乳を組み合わせることで、本来の食べ物の味を大きく変えることなく塩分の量を減らした食事のことを言います。和食に牛乳?と、合わなさそうなイメージが強いですが、適量の牛乳を和食に組み合わせることで、料理本来の味を損なうことなくまろやかで塩分の少ない乳和食ができあがります。

 

実際に牛乳を入れた食事を高齢の入院患者に出してみたところ、8割の高齢者は牛乳が入ったことや塩分が減らされたことには気づかずにコクもあって美味しいと答えました。なんと恐るべし乳和食。もう時間かけて出汁を作ったり、減塩の為に頭を抱えることなく、牛乳を活用すれば楽ですね!

 

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▲乳和食みそ汁の一例(見た目にも味にも大きな変化はない)

 

② 乳和食で高齢者の栄養管理が簡単に

多くの人は歳を取るにつれて味覚が鈍っていきます。そのために高血圧や糖尿病などの病状の為に減塩に気を配らなければならないときも、ついつい濃い味を求めて塩や醤油を足してしまいます。その結果に体調を崩してしまうと強制的にお粥のように味気のない食事しかできない生活がはじまり、食欲を失って低栄養と運動機能の低下につながってしまします。

 

しかし、牛乳を利用した乳和食なら今までの味の濃さを損なうことなく減塩ができるので美味しい食事をより楽しめられます。また、牛乳を利用することで骨粗しょう症などと骨の弱い高齢者には嬉しいカルシウムの摂取にもつながるので、栄養不足→運動機能の低下→転倒→骨折と手術→寝たきり状態」といった高齢者によくある負の連鎖を断ち切ることもできます。まさに高齢者健康の救世主ともいえます。

 

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▲乳和食の例(出展: Jミルク乳和食サイト | 乳和食でおいしく減塩 )

 

③ 乳和食で病気予防

乳和食には減塩による血圧降下やカルシウムの摂取による骨粗しょう症予防以外にも牛乳を摂取ことによる嬉しい健康効果があります。日本で行われた大規模な疫学調査「NIPPON DATA」では、牛乳や乳製品の摂取量が多い人ほど、心血管疾患による死亡リスクが低下するという結果が報告されました。つまり心臓疾患のリスクが低下するとのこと。また、タンパク質が豊富な牛乳は、タンパク質不足による血管の痩せを防いで動脈硬化などの血管疾患を予防し、認知症の発症率を下げる働きがあるとの研究結果もあります。まさに高齢者こそ摂取すべき完全な食べ物ですね。

 

3.元気な老後を送るための乳和食の実践を

 

日本の高齢者は平均寿命こそ高いものの、後期高齢者と呼ばれる75歳以上ではほとんどの人が様々な病気に侵されて薬漬けの生活を送っています。その多くは栄養不足や、合わない食習慣のために健康を崩したためなのです。人は病気になる前は病気になってからのことはなかなか考えられないものです。しかし、少しだけ危機感をもって今日から毎日の料理に牛乳を入れてみてはいかがでしょうか。自分らしく元気で楽しい老後を送るためには、今から始める自分への配慮が大事です。乳和食、始めてみましょう。