高齢者介護のあれこれ

介護相談員の在宅介護ガイド

大きな老人ホームと小さな老人ホーム、メリットとデメリットについて

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1.老人ホームの生活環境は規模によっても変化する

 

進む高齢化と共に徐々に増えていく老人ホーム入居者の高齢者。老人ホームは終の棲家として高く期待されています。しかし、老人ホームは病院のように一時的に治療や療養のために滞在する場所ではなく、自宅に代わって最期までの生活する空間であるために入居してから後悔したり転居したりすることもあります。老人ホームへの入居は高い入居金を払って入居する場合も多く、諸般の手続きも少なくないために、転居することはなかなかに難易度の高いものです。

 

老人ホームの生活環境は、運営会社の方針や医療機関との連携、人員体制、入居者たちの介護度や性格など、様々な要素にも影響を受けます。その中でも施設の規模(部屋数)によって生まれる環境の違いも確かにあります。大きな老人ホームでは200人を超える方が入居していたり、小さな老人ホームでは入居者が50人を下回ったりと規模に違いがあります。ただ老人ホームは、大きいから良い、小さいから悪いといった一元的な考え方は間違いです。規模による老人ホームのメリットとデメリットについて少し説明します。

 

2.大規模老人ホームのメリット&デメリット

 

【メリット】

 

ⅰ.医療体制が手厚いことが多い

老人ホームには提携先医療機関から定期的に訪れ、入居者の検診や治療、医療相談に応じています。大体は科目別に2週間に1回ほどの訪問が多いのですが、入居者が多い施設は全ての入居者の健康を管理するために毎週医療スタッフが訪問します。普段は決まったときに診察や医療相談をしますが、医療スタッフが頻繁に訪れる環境では体調に不安があるときに長い間待つことなく医療の相談ができるメリットがあります。

 

また、入居者の中には施設の提携医療機関以外の医療機関と契約している場合があって、その医療スタッフが施設に訪問した時に他の入居者の医療相談に応じてくれる場合があります。そのために施設によっては希望があれば週に3回以上の医療相談や治療ができる場合もあります

 

ⅱ.職員の柔軟な対応ができる

老人ホームは入居者の安全で安心な環境を維持するために適正な人員体制を構築していることが多いです。例えば介護付き有料老人ホームであれば入居者3人あたり1人以上の有資格者(医師、看護師、介護福祉士など)が常勤する必要があります。入居者が多ければ多いほど常勤のスタッフは増えます。

 

たとえ、入居者が210人の介護付き有料老人ホームでは常勤のスタッフが必ず70人以上いる計算になります。資格のない送迎担当者や清掃担当者、調理担当者を含めると、その数はさらに膨らみます。また入居者が60人の介護付き有料老人ホームでは常勤のスタッフは20人以上になります。大きい老人ホームでは常勤のスタッフの絶対数が多いために小さな老人よりも入居者の特別なリクエストに応えられる余裕がある場合が多いこともあります。

 

ⅲ.レクリエーションやクラブ活動など、娯楽イベントが豊富

老人ホームでは頻繁に外出しない高齢者も多く、施設内のイベントや催し物などを多く設けています。生け花やそば打ち体験、カラオケ大会、麻雀大会、書道教室など、様々なイベントやクラブ活動が開かれます。入居者の多い老人ホームでは、同じイベントやクラブ活動に参加できる人数が一定数確保しやすいので小さな老人ホームよりも多彩なイベントの企画ができるようになります。

 

また、老人ホーム入居者の男女比を見てみると女性が多いケースがほとんどです。そのために、時に男性の入居者は老人ホームの人間関係に馴染めず、女性中心のイベントやクラブ活動に参加したがらないこともあります。しかし規模の大きな老人ホームでは男性入居者が集まって麻雀を打ったり、囲碁を打ったり、男性同士で集まってカラオケ大会を行ったりとクラブ活動が楽しめられる機会が増えることもあります。

 

【デメリット】

 

ⅰ.施設内が大きな社会であるために馴染みにくい

老人ホームに入居する高齢者は、入居直前まであまり多くの人とかかわっていなかった方が多く、突然大きな老人ホームに入居しては心理的な恐怖感と不安が大きいこともあります。人見知りの方には大きな老人ホームが合わない可能性があるので要注意ですね。

 

小規模老人ホームのメリット&デメリット

 

【メリット】

 

ⅰ.人間関係が築きやすい

上述しましたように、人は歳を取るにつれて人間関係が狭まって老人ホームに入居する年齢になると一部の家族としかコミュニケーションをとらない状態になりがちです。そのために体調を崩して住み慣れた家から離れるといった不安の中で施設に入居するときは、できるだけ小さなコミュニティのほうが心を開いて交流しやすいことが多いです。

 

ⅱ.スタッフとのコミュニケーションが容易

若い人もそうかもしれませんが、高齢者は特に馴染みのスタッフに声をかけてもらうときや、介助を受けるときに安心感を覚えます。大きな施設だとスタッフも数も多く、入れ替わりも激しいことが多いです。しかし、小規模の老人ホームだと入居者とスタッフがより親身に接することができるので、結果的に入居の満足度が上がることが多いです。また、スタッフは入居者の小さな変化に気づきやすくなるために、病状の変化や心のケアにも早期に対応できるメリットもあります。

 

【デメリット】

 

ⅰ.入居者の特別な要望に応えづらい

老人ホームの入居者が少ない分、施設スタッフも少ないです。そのために一人のスタッフの欠員は入居者のケアに大きく響きます。このような理由から、入居者の外出や通院などの付き添いに施設スタッフが対応することはなかなか難しいです。

 

ⅱ.介護度によるフロアー分けが難しい

大きい施設の場合は、移動の負担が大きい重介護度の入居者を食堂のあるフロアーに寄せたり、認知症の方々のフロアーを別に設けたりすることがあります。まだ身体が元気で認知症のない入居者は、寝たきりの方や認知症の方と同じ空間で過ごしたがらないことも多いです。そのために小規模の老人ホームでは、まだ元気な入居者の心的ストレスが大きくなる可能性があります。

 

3.施設の特徴は目で見て確かめること

 

老人ホームは、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームのような種別、運営会社、規模、築年数によっても生活環境が大きく変わります。もちろん、施設の規模によっても一般に生じる違いがありますが、基本的にはそれぞれの老人ホームの特徴が強く現れます。老人ホームに入居を検討するのなら早めに見学に行き、自分の目で確かめながら老人ホームの担当者に色々と聞いてみることですね。