高齢者介護のあれこれ

介護相談員の在宅介護ガイド

介護施設入居を拒む高齢者のための10の説得例

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1.増える要介護高齢者と老人ホーム

日本の高齢化率は2016年基準で約27.3%であり、国民の4人の一人が65歳以上の高齢者という状況です。また高齢者人口のうち600万人に上る方々が日常生活に人の手を借りなければならず、要介護認定を受けています。介護は高齢者本人も介護者の家族も大変なものですが、幸いなことに2000年に施行された介護保険制度のおかげで様々な介護サービスが利用できるようになりました。最近では実費にはなるものの、家事代行サービスなど高齢者の為の様々な民間サービスも増えています。

その中でも要介護高齢者の終の棲家として選ばれるのが老人ホームです。高齢者のほとんどは介護施設に入居したがらない傾向にありますが、家族の負担と高齢者本人の健やかで楽しい生活の為なら老人ホームは良い選択肢になります。最近では有料老人ホームでも入居一時金と毎月の費用が抑えられたところが多くできているので選択の幅も広がっています

 

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2.介護施設入居を勧めるときの様々な壁

有料老人ホームなどの日本の介護施設は世界的に考えても非常に優れたサービスを提供していて、介護に悩む家族の良い選択肢になっています。しかし、老人ホームはいまだ「姥捨て山」という認識が根強く残されていて高齢者本人や家族、親族までが感情的に反対することも多いのが現状です。また身体拘束や生活の制限など、本当のことよりも膨らんでしまった一部老人ホームの悪いイメージが世間に広がっていることも介護施設入居への後ろ向きな影響の原因になっています。その具体的な例を少し挙げましょう。

 

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ⅰ.(本当は一人で暮らせない身体の状態だが)高齢者本人がまだまだ元気だからと主張して人の助けを受けたくないと強く主張する

 

ⅱ.認知症患者や寝たきりの人がいるところに入居すると自分もそうなってしまいそう

 

ⅲ.入退院することもあるからどうせ長期入居できない

 

ⅳ.お酒やたばこなどが制限されるから絶対に入居したくない

 

ⅴ.外出や趣味、就寝時間などの生活リズムなどが制限されるので息苦しい

 

ⅵ.家族の介護を放棄すると介護にかかわらない親族から叱責を受けてしまう

 

ⅶ.配偶者の介護があるから自分は入居できないとする

 

ⅷ.集団生活が苦手だから介護施設には入居できないという

 

ⅸ.認知症による被害妄想があって捨てられると思いこんで攻撃する

 

ⅹ.理由を言わず入居を拒否する

 

このほかにも高齢者には「家族に少しでもお金を残したいから介護施設にお金を使いたくない」、 「家の近くの墓の管理ができなくなる」、「自炊がしたい」など、ありとあらゆる理由や言い訳があって、家族との意見調整が難しくなります。

 

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3.介護施設入居をひどく拒む高齢者の説得方法

 上で羅列した様々な「入居できない」理由はほとんどが老人ホームに対する誤解や家族とのコミュニケーションが上手くいかなかったために起こるものです。人は歳をとると鈍感になっていくようにもみえますが、高齢者の悩みは細かくて心はもろいです。そのために「いわずともわかるでしょう」などは絶対に思わず、丁寧かつ優しく繰り返してコミュニケーションをとっていく必要があります。それでは例として挙げた「高齢者の入居できない理由」の説得方法をみていきましょう。

 

こちらで紹介する説得方法は介護施設入居相談員と家族の実際の例をもとに紹介しています。参考にしていただければと思います。

 

ⅰ.(本当は一人で暮らせない身体の状態だが)高齢者本人がまだまだ元気だからと主張して人の助けを受けたくないと強く主張する

→「いざ自宅での生活が難しくなってきたときは時間的余裕をもって自分にもっとも合った老人ホームを見つけるのは難しくなります。人気がある老人ホームはすぐに部屋が空かないかも知れませんし、部屋が空いていても日差しや長めの良い部屋を選ぶには早めの検討が大事です。元気なうちに念のため老人ホームを検討してみて、一度体験入居もしておきましょう。」

と話をしていたら「それなら・・・」と体験入居までしていただきました。そしたら「家事と炊事をやらずに済んで楽だわ」とすんなりと入居して頂きました。

 

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ⅱ.認知症患者や寝たきりの人がいるところに入居すると自分もそうなってしまいそう

→「そうですね、でも今入居している認知症患者のみなさんももともとは元気でした。認知症患者がいるのも寝たきりの患者がいるもの、最後まで追い出されることなく過ごされているからです。みんなが元気な老人ホームというのは、元気で亡くなったときは出ていかなければいかない老人ホームだけです。また、認知症の方や寝たきりの方との接し方が難しい方は部屋の位置やフロアを変えることでなるべく入居者の居心地のよい過ごし方に配慮してくれるのできっと大丈夫です」

と話をしていたら最初は「それでもね・・・」と否定的な想いを払しょくできない様子でした。しかし翌日には「入居します」と考えを変えて頂けました。やっぱり最後まで自分の身体がどれだけ衰えても追い出されることなく最期まで安心できるところが決め手だったそうです。

 

ⅲ.入退院することもあるからどうせ長期入居できない

→「入院されても3か月までは待って差し上げますよ。3か月の入院なんてそうそうありませんから安心してください。入院されている間は食事代も頂きません。」

と、ご存じなかった老人ホームの対応を教えて差し上げただけで「そうなの~ありがとう」と入居申し込みをしてくださいました。老人ホームは営利目的で作られてはいますが、入居者の家でもあるので最大限みなさんの生活に配慮しています。

 

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ⅳ.お酒やたばこなどが制限されるから絶対に入居したくない

→「実は老人ホームでお酒が飲めてタバコも吸えますよ。ときにはレストランで入居者同士で晩酌もします。ただ、飲みすぎには注意なので、部屋にお酒は置いておけません。タバコはタバコの煙が苦手な方がいるので室内では吸えませんが、庭に出て吸うのは大丈夫ですよ。」

と説明しましたところ、今まで頑なに拒否していた老人ホームの入居検討を始めてくれました。本人からの希望で老人ホームに何度も見学に行き、顔見知りになった入居者と麻雀を打つようになり、それから3か月くらいで入居されました。意外と知らないだけで、老人ホームは自分らしく過ごせる場所なのです。

 

ⅴ.外出や趣味、就寝時間などの生活リズムなどが制限されるので息苦しい

→「いえいえ、そんな制限はございません。外出時は外出していることが分かるように玄関で記名をするだけで、お一人での外出が危ないとき以外は自由に外出できます。また今まで通りに趣味を楽しめられるのはもちろん、生け花やカラオケ、麻雀、園芸、ピアノや旅行まで、いろいろな趣味活動を用意しているので老人ホームに入居してから趣味活動が増える方は多いです。もちろん寝る時間も体調に問題がなければ自由です。夜遅くまで本を読まれる方もいます。」

と説明しましたところ、すぐに見学の予約を入れてくださって、1か月後には入居申し込みをしてくださいました。いろいろと準備があるとのことで半年後の入居で調整して、余裕をもって入居されました。

 

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ⅵ.家族の介護を放棄すると親族(介護はしない)から叱責を受けてしまう

→これは非常に難しいですね。介護に立ち会ってもいないし介護施設に悪い印象をもつ親族の方からの反対で、介護をしている家族がまるで悪者になってしまう悲しい状況です。高齢者本人に少しでも老人ホーム入居の意向があるのなら、入居予定者本人と親族で1度でいいので事前に選んでおいた良い老人ホームに見学に行ってみることです。

なかなかハードルの高いことなので、難しい場合は入居予定者の家族だけでも見学にお連れして入居の意向を固めて頂くことが第一歩ですね。同時に親族の方に老人ホームの資料を送ってみて頂き、どうにかして見学に同行して頂くのが最も効果的です。

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ⅶ.配偶者の介護があるから自分は入居できないとする

→いわゆる「老老介護」の場合、ご夫妻がお互いを気にして家を離れられないときがあります。お二人で老人ホームに入居出来たらよいのですが、予算の問題から様々な細かい事情があるのでできないこともあります。結局、お一人が老人ホームに入居してから毎日のように病院と自宅に配偶者の看護と介護で通う方もいました。

このような場合はご夫妻での同時入居は難しいと考えて、自宅にすぐに帰れる距離の介護施設に入居して徐々に老老介護の習慣から離れるのが望ましいです。入居される方にも、いつでも家に帰れるので心配なく入居できることを繰り返して説明することが望ましいです。

 

ⅷ.集団生活が苦手だから介護施設には入居できないという

→人は歳をとると徐々に他人との交流が少なくなりがちで、体調が悪かったり足腰が自由に動かせなくなると外出が減るので自宅にこもることが増えてきます。そのために高齢者には自然と人との接し方がわからなくなって来たり集団行動がにがてになってくることがよくあります。そのために集団でワイワイしていそうな和気あいあいの老人ホームは苦手かもしれないと心配する高齢者と家族は多いです。このような方は多くいるので老人ホームでも高齢者ご本人のライフスタイルに無理のないように配慮をしてくれます。

「できるだけ散歩にも出てほしいし、部屋にこもりがちになるのは身体にもよくありませんが、無理して他の人と触れ合って話してレクリエーションに参加しなくていいですよ。ありがままで過ごして頂いて大丈夫です。」

と伝えたところほっこりした笑顔で安心された様子でした。その後、1回1週間の体験入居を経て今は入居されています。今もあまり活発にレクリエーションに参加してはいませんが、談笑を交わす友人も数人できて笑顔で話す時間も増えています。

 

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ⅸ.認知症による被害妄想があって捨てられると思いこんで攻撃する

→認知症になると短い言葉と欠けた記憶、分かってもらえない悲しさと怒りが暴言と暴行、奇声、徘徊、などで現れることがあります。正常な人も同じですが、自分の心と体を守るために危機を感じ取ると敏感に反応します。正常な人と同じように状況を判断する機能がないとしても怖い感情は鮮明に残ります。そのために認知症患者の場合は今まで住んでいた自宅から離れて老人ホームに入居することは「捨てられるといった怒りと悲壮感」または住処が変わることに対する「酷い混乱」を招くことがあります。

認知症の程度と症状にもよりますが「家族と一緒に旅行に行きましょう」として老人ホームの見学をして、家族同伴で旅行にきたことにして老人ホームで体験入居またはショートステイをすることで徐々に場所と人の環境に慣れて頂くことも有効な場合があります。

 

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ⅹ.理由を言わず入居を拒否する

→家族だから起こりやすい問題が「言わずとも分かるでしょう」と思い込み、お互い本音を言い合わないのに、お互い分かり合えないことでストレスを貯めることがあります。他人だからと思って話すとちゃんと言える話が相手が家族になる途端言葉が出てこないことがあります。しかし、家族だからと言って言葉にして丁寧に繰り返してコミュニケーションをとらないと想いが伝わらないのは当然のことです。

この場合はいつも接している家族でなく、たまにしか会わないけれど仲のいい家族(孫など)友人に話を聞いてもらうことも有効です。ほとんどの場合、高齢者本人と介護者の家族の間では細かな誤解が積もり積もっていることが多く、お互いの本音が理解できることで関係性が回復することも多いです。老人ホームへの入居はそこからです。お互いがお互いのことを大切に想っていることさえ伝われば老人ホームへの入居検討も前に進みます。

 

 以上、老人ホーム入居相談員としての経験した例を含めて紹介させて頂きました。高齢者の介護は平均10年に上ります。一人で頑張りすぎない介護で家族の絆を守っていきましょう。