高齢者介護のあれこれ

介護相談員の在宅介護ガイド

認知症?! いいえ、耳が聞こえづらかっただけでした。

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 1.認知症かな?と、間違われやすい聞こえの問題

加齢の伴って起こる様々な体の不調。その中でも高齢者本人に最もショックなものは『認知症』です。死を目の当たりにする末期の癌(ガン)の宣告よりも、軽度な認知症のほうが遥かにショックなのです。

厚生労働省の発表(2015年)によりますと、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症患者とされていて、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人にも達し、65歳以上の高齢者の5人に1人もの人が認知症患者になるとも言われます。

これだけ多くの人が認知症患者になっている日本ですが、まだ日本では認知症は恥ずかしい病気との認識が根強いです。記憶がなくなってしまい、家族の顔や自分の名前も覚えられず、夜間の徘徊や排せつの問題を抱えるなど、人様に迷惑をかける病気とのイメージが強いからです。そのために病院で認知症の診断を受けた時もそうですが、普段の生活の中で自分自身が認知症ではないかと思うことがあっただけで高齢者は非常に大きな悩みを抱えます。

しかし、実は認知症かなと思った症状が、耳が遠くなっただけだったこともあるのです。実際にあった事例を交えて紹介します。

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2.佐藤文代(仮名)さんのエピソード

文代さん(82歳)は介護認定なども受けてなく、旦那さんと二人で自立した生活をされていました。普段から地域の活動にも積極的に参加され、家事も問題なくこなし、アクティブな毎日を送っていた元気な方でした。

しかし、物忘れが増え、疲れやすいなど、年齢を感じるようになってから、大きなショックを受けるハプニングがありました。

 

(離れて過ごす娘からの通話の中で・・・)

 

:お母さん、今から秀くん連れていくからね。

 

:あら、急にどうしたの。

 

:お母さんたら、昨日言ったんじゃない。

  今日は美味しいもの食べに行きましょう。

 

:あ、うん、そうだね。じゃあ家で待ってるから・・・

 

実は文代さん、娘さんとの昨日の会話を全く覚えていませんでした。電話口では覚えていたふりをしていましたが何のことかまったく記憶にありませんでした。最近物忘れが増えたとはいえ、言われるとすぐに思い出していたのに記憶にないことに酷く落ち込んでいました。ご自分が認知症ではないかと、きっと認知症であると思われていたためです。

 

久しぶりの孫や娘との外食で、いつもならとても楽しいはずの時間なのに顔色の悪い文代さんをみて娘さんが理由を尋ねました。

 

:お母さん、今日どこか具合でも悪いの。

  顔色悪いし何も話さないのね。大丈夫?

 

:大したことないんだけどね。

  お母さん今日のこと覚えてなかったのよ。

  記憶になくて・・・(暗い顔)

 

:ちょっと忘れたんじゃなーい? 

  そんなこともあるのよ。(ちょっと心配)

 

:でも全く記憶になかったの。最近物忘れも激しいし・・・

 

その場では文代さんも娘さんも、認知症という言葉も病院の検査のことも言いだすことはありませんでしたが、娘さんが翌日電話で病院の検査にいってみようと誘ったのです。まるで癌の宣告を受けに行くかのような重い足取りで二人は近所のクリニックに行きました。そこでの診察、検査後のお医者さんの判断がこちら。

 

医者:少し年齢による物忘れなどはあるとは思いますが

   まだ認知症ではないですね。ご安心ください。

 

:先生、でも聞いたことを全く覚えていないことがあるんです。

  とても不安でして・・・

 

医者:佐藤さん、耳の聞こえは大丈夫ですか。

   今も少し聞き取りづらいでしょう。

 

:耳ですか・・・ そうですね。

  最近は小さな音は聞こえないことがありますね。

 

医者:いちど聴覚検査をしてみましょう。

 

聴覚検査の結果は『加齢による難聴』で音が聞き取りづらい状況でした。補聴器を使わないと日常生活に支障が出始める可能性のある状況でした。今回の物忘れも、実は音が鮮明に聞こえず、言われたことがちゃんと聞こえていなかったのです。

耳は聞こえにくいということは気にもせず、文代さんの顔には笑顔が戻りました。認知症ではないかととても心配されていたそうです。その後、文代さんは医師の勧めで補聴器を利用することになり、今は依然と同じく聞こえと覚えに問題なく過ごされています。

 

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3.早めの確認と対応で高齢者の気持ちはケアできる

今回の文代さんのエピソードでもそうでしたが、人は歳をとると気持ちはもろくなっていきます。また加齢を感じる年齢になると落ち込みやすく、認知症のことも本人の気持ちが傷つかないように話していく必要があります。

その為にも、家族や自身に認知症が発症する前から認知症のことを知り、認知症患者の気持ちを害することなく、スムーズに早期の認知症治療と予防などの対応が取れるようにする必要があります。疑いがあればまずは診察、検診ですね。

 

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