高齢者介護のあれこれ

介護相談員の在宅介護ガイド

『無届老人ホーム』って何? 入居してもいい? ダメ?

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1.増える高齢者の貧困、最後の砦は『無届老人ホーム』

 

急速に増えていく日本の高齢者、今では高齢者の為の様々な介護サービスや関連商品も次々と開発され、身体の不調のある高齢者の暮らしも昔に比べると大きく改善されました。しかし、高齢者の暮らしを支える介護、医療、生活の様々なサービスは、言うまでもなく有料です。介護と医療は介護保険、医療保険で対処するとしても、公的保険の自己負担金(1割~3割)と食費や家賃、自費の生活サポート費を考慮すると、とても年金だけでは生きていけません

 

実際に老後のための貯金や収入が足りず、生活保護を申請する高齢者も年々増えています。2016年3月時点では生活保護受給の高齢者世帯が過去最高の約82万6656に上り、直近の20年間で実に2倍に増えました。こんなにも高齢者の貧困問題は深刻化しています。このような時代の背景から生まれた介護施設が『無届老人ホーム』です。

 

無届老人ホームは、その名前の通り行政に届け出ていない無認可の老人ホームのことを言います。無届老人ホームは、政府が定める居室の広さや介護と医療の人員体制、各種設備は政府が決めた基準は満たしていないことが多いですが、月額費用が10万円以下(平均して10万5000円/野村総合研究所調査)に収まることも多いために経済的に困窮した高齢者世帯の最後の砦になっています。この無届老人ホーム、厚生労働省の調べによると2014年10月の961ヵ所から2016年1月1650ヵ所と、2年足らずで1.7倍にも急増しています。これだけ需要が高まっているとの証でもあります。

 

2.『無届老人ホーム』が届出を出さない理由

 

行政に届け出ている有料老人ホームは、行政が定める介護施設の基準を満たす必要があります。居室の広さが13㎡(約7畳)、廊下の幅、段差のない構造、火災用のスプリンクラー、介護と医療の体制など、全部の基準をクリアするには相当な金と労力が要ります。また、介護付き有料老人ホームの場合は入居者3人に対して有資格者の介護または医療スタッフが常勤換算で1名以上いなければいないなど、厳しい基準になっています。

 

行政に届出を出していない無届老人ホームは、このような条件を守らなくとも入居費用を安くすれば入居者はいくらでも入ってくるし、収益も生まれるから、面倒で金のかかる行政指導を避けて届け出ないのです。行政指導に対応するための人件費だけでも重く圧し掛かってしまいますからね。

 

3.『無届老人ホーム』での生活はどうなの?

 

『無届老人ホーム』という名前からは、運営事業者が行政に届出を出していない情報しか読み取れません。行政に届けだされていない理由も、単なる行政指導が面倒だからといった理由でしっかりしたサービスを提供しているところもあれば、低所得の高齢者でも入居できるように居室の広さだけを行政が定める基準よりも狭くしているところもあり、また荒稼ぎのために所狭しと並べられたベッドに高齢の入居者を並べて(1人あたり2畳程度の空間)で運営する無届老人ホームもあります

 

そのために、無届老人ホームだからといって全部ダメな介護施設ともいえない状況で、経済的な理由によって無届老人ホームしか入居できない場合は施設をよくみて慎重な判断をする必要があります。中には無届老人ホームでも、入居された方は満足した生活を送っている素敵な無届老人ホームもあるので、なんとも一言では評価しにくいものです。

 

4.施設入居の検討は、まず見学から!

 

上述しているように、無届老人ホームといっても全部同じようなものではありません。高い有料老人ホームよりは住環境や介護体制に不足がある可能性も高いですが、経済的な理由からでも、今までの生活環境からでも、入居者に合う施設と合わない施設というものは必ずあります。なので、まずは気になる施設に見学予約の上でじっくり見て聞いて検討することが大事です。介護に悩まれるみなさん、まずは見学に行きましょう。