高齢者介護のあれこれ

介護相談員の在宅介護ガイド

高齢者はメタボなんか気にするな! 問題はロコモだ。

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1.高齢者を一気に衰えさせる『ロコモ』とは?

 

ロコモは、『ロコモティブシンドローム(運動器症候群)』の略で、一般にロコモと呼ばれることが多いです。ロコモは、2007年に日本整形外科学会が提案した概念で、まだまだ認知度は低い言葉ですが、学会や医療、介護の専門家の中ではロコモ対策の重要性が日々高まっています。

 

ロコモの定義は『運動器の障害によって移動機能の低下をきたした状態』です。移動機能とは歩行、立ち座りなどを意味し、症状が進行すると介護が必要になるリスクが高くなるとされます。そのために、ロコモになると運動器を構成する骨や、軟骨、筋肉などの組織が加齢とともに量的に、そして質的に減少します。

 

筋骨の減少は、軟骨であれば変形性関節症等、骨であれば骨粗鬆症を引き起こすこともあります。それらが何らかのきっかけで膝痛や腰痛、骨折につながり、結局は歩けない状態、寝たきりの状態になる要因になります。そのため、ロコモにならないように普段から十分な栄養を摂り、適度に体を動かすことが大事です。

 

 

2.高齢者の健康は、栄養過剰より栄養不足で崩壊する

 

加齢と共に気になる『健康』、食べ物に関する関心も高くなっています。

非常に多くの人が、健康の為に食べすぎず、脂っこい食べ物や肉類を減らして低カロリーの野菜を多くとろうとしています。

 

実はこれ、高齢者は絶対にやってはいけない間違った健康志向です。高齢者が低カロリーの食事を続ける場合、若い人よりも急激にやせ細っていき、運動機能が低下してロコモ状態に陥ります。ロコモは更なる筋肉量の減少を招き、重い介護状態に陥りやすくなります。栄養不足を原因に認知症が発症することもあるので、質素な食事が健康に良いと思うのは高齢者にとっては最も恐ろしい誤解なのです。

 

もちろん肥満やメタボは高齢者の心疾患や脳血管疾患などのリスクを高めるので適度に管理する必要があります。しかし高齢者になって大事なのは、痩せないように頑張って食べ、筋肉と脂肪を守ることです。生活習慣病のための食事制限に臆病になりすぎずに必要な栄養をしっかり摂る必要があります。

 

また多くの人は、高齢者になると運動量も減るし、胃もたれしやすいので若い人よりも少ない食べ物で大丈夫だと思いがちです。しかし、若い人は1食平均8gのタンパク質を摂れば普段からの身体の筋肉維持に問題がありませんが、高齢者は25gを摂取しないと筋肉をつくり、運動機能を保つための十分な栄養摂取にならないとの研究報告もあります。驚くことに、高齢者は若い人よりも3倍のタンパク質を摂らないと筋肉と運動機能は歩けなくなるまでに落ち続けることになるのです。このような理由からも、高齢者の介護は質素な食生活から『肉食介護』への大きな転換が必要です。

 

さらに、『廃用性筋萎縮』と言いますが、高齢者の場合は使わない筋肉は急激に衰えていきます。体調を崩したり、ケガや手術で安静にしていたりする場合、高齢者は1日に1%の筋肉量が減るともいわれます。栄養摂取が十分でない場合は1週間安静にしているだけで15%の筋肉の減少がみられることもあります。1週間も横になっていれば、十分な栄養摂取とリハビリができても1か月の回復期間が必要で、食欲を失ったりリハビリがうまくいかなかったりすると寝たきり状態に陥るケースが非常に多いです。

 

その為にも、高齢者は普段から質素な食事を辞め、魚や肉などタンパク質の豊富でカロリーの高い食事を摂ることで体の蓄えを増やす必要があります。もちろん、適度な運動で筋肉を動かして維持することも大事です。

 

 

3.元気に過ごすための高齢者の健康習慣とは?

 

高齢者が元気な老後を送るためには『みずめしウンうん』が大事です。つまり、「みず:水分」を多く摂り、「めし:飯」を十分に摂り、「ウン:ウンコ」を毎日出し、「うん:運動」を適度にすることです。

 

その中でも毎日行うものが、食事。身体機能を維持するための食事の習慣がこちらです。

 

① 高タンパク質な食事をする

上述したように、高齢者は筋力の維持に若い人の3倍のタンパク質を摂る必要があります。野菜と炭水化物中心の質素な食事は危険! 若い人よりも肉や魚を食べる必要があります。摂取するタンパク質が減ると血管が細くなって動脈硬化にもなりやすいです。そのために、肥満や糖尿病などが気になる方でも食べる量を減らすのではなく、ご飯やパンなどの炭水化物の量を減らして魚や肉を積極的に摂る必要があります。また、魚に偏らずに牛肉や豚肉などの肉類も摂ることですね。

 

② 食べたいものを食べる

健康の維持にもっとも大事なのは、食欲を失わない事。高齢者になると高血圧や糖尿病など、食事の制限が必要な生活習慣病の一つや二つはみんな持っています。病院からは特定の病気のために様々な「食べてはいけないもの」を念押しされますが、そんなもの気にしていては何も食べられなくなります。あまりに厳しい食事制限で食欲を失ってしまうと栄養状態が悪化し、運動機能が低下することから寝たきり状態に繋がるので無理せずに食べたいものを食べましょう。

 

③ 一人で食べない

介護の現場ではよく『独居は危ない!』と叫ばれていますが、実は『独居』よりも『孤食』の方が高齢者の健康をむしばむ主要因です。家族や友達と食事を楽しむことは薬やリハビリよりも高齢者の健康につながるものです。他の人とのつながりをもって食事の時間を楽しむことが栄養状態の改善や、心筋梗塞などの心疾患のリスクを大幅に下げるといった研究が多く発表されています。多世代の家庭であっても高齢者一人が介護食を黙々と食べることは多々。しかし、高齢者の食べるものが異なってもみんなで食べることが高齢者の栄養管理に繋がります

 

歳をとると健康不安は増す一方ですが、良い人に囲まれて肉や魚などのタンパク質豊富な料理を中心に食べたいものを存分に食べていけば、介護予防のための最もよい栄養管理になることでしょう。息まずに楽しみましょう。