高齢者介護のあれこれ

介護相談員の在宅介護ガイド

(生活編)これでも老人ホームに入れるの?

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要介護者600万人の時代。国の介護保険サービスの縮小の中でも毎年老人ホーム入居者は増えていく一方です。今回は、[(医療編)これでも老人ホームに入れるの? - 高齢者介護のあれこれ]の続編として、様々な生活の要望や悩みがあっても老人ホームに入居できるかについて説明します。

 

1.介護対応のなやみ

 

・寝たきりだけど大丈夫なの?

特別な医療体制が必要な方でなければ、寝たきりであることは老人ホーム入居に全く問題になりません。高齢者の多くは最期には寝たきりに近い状態になるため、ほぼ全ての老人ホームでも寝たきり状態の介護対応は問題になりません。

 

ただ、『健康型有料老人ホーム』を謳う一部の老人ホームでは介護状態になったり、寝たきり状態になった場合は退去を迫られることもあるので、ご注意ください。

 

・食べられないものが多いけど対応してくれるの?

老人ホームでは、食品アレルギーなど高齢者の健康上の理由がある場合はほとんどの老人ホームでしっかりと対応をしています。食べられないものの代わりに食べられる料理を出したり、食べられる料理の量を増やしたりすることで対応しています。

 

今では多くの老人ホームで給食会社から毎食の料理を調達しますが、一部の老人ホームは施設内で調理を行っていて、高齢者の好みや体調を考慮した食事を用意しています。

 

・認知症が重くて会話が成り立たないけど対応してくれるの?

高齢者の多くは加齢とともにアルツハイマーやレビー小体型認知症、脳血管性認知症、などの認知疾患を発症して、普通には会話が成り立たないことも多いです。老人ホームはこのような方の入居は当然問題ありません

 

中には意思疎通が難しい認知疾患の高齢者であっても、しっかりと気持ちを理解して楽しく穏やかな生活を送って頂く為に毎日声をかけて会話をしている老人ホームも少なくありません。

 

・夜間には徘徊したり服を脱いでしまうけど問題ないの?

夜間徘徊など、いわゆる問題行動がある方でも一般的に老人ホーム入居に大きな問題にはなりません

認知疾患のある方の場合、さまざまな理由で健常者には理解しにくい行動をします。たとえば夜間の徘徊と脱衣は、実は「便秘」によるときがあります。便意があって夜間に起き、排便しようと服を脱ぐケースです。この場合、服薬や食べ物の調整で便秘症状を改善することで夜間徘徊と脱衣行動が収まったりします。老人ホームでは長年の経験と知識から認知疾患のある方の行動の理由を理解して対応をしています

 

もちろん、人員体制が手厚くないために細かな対応ができない老人ホームもありますが、基本的にこのような問題のために入居ができないことは少ないです。

 

・暴言を吐いたり、突然奇声をあげたり、自傷行為もあるけど入居できるの?

このような問題行動のときは対応できる老人ホームと対応できない老人ホームがあります。入居者の問題行動に正しく対応できる人員体制があるかないか、の判断基準で分かれます。老人ホームに入居して改善の見込みがある場合は入居できますが、他の入居者に悪い影響が及ぼされると判断されると中々入居が難しくなります。

 

しかし、このような問題行動には、うまく気持ちが伝えられない「不安と不満」が背景にあることが多く、介護スタッフのきめ細やかなで親身な対応で落ち着いていく場合が多いので、まずは老人ホームの担当者と相談してみることですね。

 

2.老人ホームに入居しても自由な生活がしたい

 

・近くの親戚のところまで頻繁に外出したい

老人ホームは意外と閉じ込められているイメージが強いようですが、入居者が一人で外出することが危ない場合を除けは自由に外出ができ。入居者同士で買い物に出かけたり、家族と旅行に行ったりと、世間のイメージよりも自由な生活環境です。

 

・ペットと同居したい

ペットと同居できる老人ホームはごくわずかですが、少しずつ増えてきています。しかし基本的にはペッドの世話と、世話にかかる費用は実費として負担しなければなりません。結果的にペッドと同居できる老人ホームは高額な入居費用のかかるところが多いですが、そうでない老人ホームもあります。

 

(ペットと同居できる老人ホームはこちらをみてくださいペットと住める有料老人ホームの特集|LIFULL介護

 

・今やっている趣味活動を今後も続けたい

老人ホーム入居前から続けていた趣味活動、基本的に他の入居者の迷惑にならなければ継続できます。最近ではカラオケや生け花、麻雀、園芸なども施設内でできる場合があるので、老人ホームに入居してから新たな趣味を始められる方もいます。

 

・入居してからも週末に自宅に帰りたい

まだまだお元気で自宅を残したまま老人ホームに入居している方は、たまには自宅に帰って生活される方がいます。自宅に帰られることは入居者本人の危険がなく、家族の特段の希望がない限り自由にできます。自宅に帰られている間の食費は事前に老人ホーム側に伝えている場合に限ってかからない場合もありますが、配食会社と月単位の契約をしていることが多いため、基本的に食費は固定費としてかかります

 

・お酒やタバコがやめられない

老人ホームに入りたくない理由として好きなお酒とタバコをあきらめないといけないから、という方がいます。しかし、お酒の場合は医師の特段の指導がない場合は老人ホームに入居しても飲むことができます。ただし、飲みすぎないようにお酒を老人ホームで管理する場合もあり、入居者のお部屋にはお酒を置かないようにすることが多いです。

 

また、タバコの場合も室内では吸えませんが、老人ホームの外では吸えるところが多いです。時にはタバコを吸う介護スタッフと老人ホームの外でタバコを吸うこともあります。

 

 

3.その他のなやみ

 

・入居に際した「身元引受人」がいない

老人ホームに入居するときは入居者の怪我や入院、ご逝去後の手続きなどがあるために身元引受人が必要です。現状として身元引受人がいないと老人ホームに入居することはできません。しかし身元引受人がいない老人ホーム入居希望者も多いため、一定の費用を払って身元引受人を代行してくれる法律事務所などもあります

 

・生活保護を受けている

生活保護受給者の場合、老人ホーム入居を断られることがあります。老人ホーム入居には毎月一定の費用が掛かり、利用する医療サービスによっては医療保険の自己負担が上乗せされます。そのために経済的に困っている生活保護受給者の場合は毎月の支払いに不安があるとのことで入居を断られることがあります。一般的に有料老人ホームは入居金のほかに毎月15~25万円程度かかります。そのため生活保護受給額の範囲だと入居できるホームは限られます。しかし最近では、生保受給者でも入居の相談ができる低額なホームも増えてきました。

 

・介護保険はあるけど、まだ50歳で高齢者ではない

若年性認知症などの難病疾患の患者さんは第二号被保険者として40歳以上は介護保険が利用できます。しかし65歳以下の方は老人ホーム入居を断られることがあります。実は老人ホームでは高齢者の余命を平均5年と考えて入居金を設定しているところが多く、5年を大きく超過して入居する場合は老人ホームの収支はかなり悪化します。そのために余命が長い方は断られることがあります。また、若年性認知症などの方の場合、体は元気な場合が多く、介護職員が対応しきれないほど力が強いこともあって、老人ホームの体制として対応できないと判断される場合もあります。まずは老人ホームの担当者と相談をしてみることです。

 

4.まとめ

 

高齢者は長年生きてこられたこともあり、お気持ちの問題や生活の習慣から様々な要望や悩みがあります。老人ホームでは、すべてではありませんが、高齢者の生活と想いを尊重して、最大限住み心地のよい空間にしようと努力しています。人員体制にゆとりがある老人ホームでは、1人の入居者を連れて入居者家族の墓参りに付き添う事もあるくらいです。なかなか難しい問題が多いですが、一人で悩まずにケアマネや老人ホームの担当者と相談してみましょう