高齢者介護のあれこれ

介護相談員の在宅介護ガイド

要介護認定のために地元に戻らなければいけないの?

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1.介護が必要な高齢者に『介護保険』は、まさに生命線。

 

超高齢化社会の日本、毎日の生活に人の手を借りなければならない高齢者が急速に増え、要介護認定を受けた方は2016年に基準で600 万人を超えました。介護保険は要介護の認定調査で決まった介護度によって、介護サービスが利用できる上限額が設定され、上限額内で介護サービスが受けられます現金の給付ではありません

 

この介護保険は要介護1の場合であれば月に約16万円要介護5であれば月に約36万円ものの介護サービスが一部の自己負担だけで受けられるため、経済的に裕福でない方でもかなり充実した介護サービスが受けられます。介護が必要な高齢者の方には、まさに生命線のような公的保険なのです。

 

2.要介護認定の流れは「書類→対面調査」

 

介護保険を利用するには要介護認定を受ける必要があります。まずは住民票の登録のある、お住いの市区町村へ申請を行います。

 

要介護認定の申請窓口は各役所(介護保険課など)に設置されています。区役所ごとに担当窓口の名前が異なる場合がありますので、窓口が分からない場合は総合案内などで確認しましょう。

 

要介護認定の申請に必要な書類はこちらの3つ。

 

「申請書」「被保険者証」「主治医意見書」

 

申込書の用紙は市区町村の窓口でもらうか、市区町村のホームページでダウンロードすることもできます。申請書と、被保険者証、主治医意見書が準備できましたら、お住まいの市区町村の介護保険課窓口か地域包括支援センターに提出しましょう。

 

書類の提出が完了したら、今度は介護認定調査員による訪問調査が行われます。本人や家族に対して普段の生活ぶりをうかがって確認を行います。どの程度の介護が必要かを判断し、のちに行われる介護認定調査会で適正な介護度を判断するための材料として利用します。この訪問調査の時にたまたま体調を崩してしまうと介護度が高く設定されたり、一人ではできないことを「できる!」とウソをついてしまうと介護度が低く設定される場合もありますので、望まぬ認定結果がでないように気を付ける必要があります。

 

また、訪問による介護認定調査に加えて、主治医への意見書作成が依頼されます。主治医の意見書では、対象者の身体の状態や精神状態を医師として判断し、こちらも介護認定調査員の訪問調査資料とともに適正介護度の判断材料として利用します。

 

3.住民票がある地元に帰って要介護認定調査を受けなければならないの

 

介護保険の財源を担っているのは基本的に地方自治体、つまり高齢者本人が住民登録をした地域の自治体です。そのために金を払う自治体は介護保険が適正に使われるか管理監督するためにも、原則として住民登録された地域で介護認定審査を受けることになっています。

 

しかし、地方に住民票を残したまま急に家族の住む遠方に行ってしまった場合はどうすればいいでしょう。『田舎で一人暮らしをしていた親が急に体調を崩して家族の住む東京に来てもらった』なんてよくあること話です。そこから老人ホームへの入居や介護サービスの申請など、急いで介護保険を利用したい場合、本来は住民票のある地元に帰って介護保険の認定調査を受ける必要があります。

 

ただ、体調を崩して遠方に住む家族の元まで来てもらっているのに、遠い田舎までお連れするのは現実的でないことも多いことでしょう。ここで利用できる行政サービスが『認定調査属宅制度(正式名称ではありません)』です。この制度は住民票の登録がある自治体(地元)が今滞在している自治体に要介護保険認定調査を依頼(属宅)することで、遠い地元に帰ることなく今滞在しているところで要介護認定の手続きができる制度です。属宅費用は無料です。

 

4.まぼろしの『認定調査属宅制度』、ぜひ利用しましょう。

 

実はこの制度、ほとんど知られていません。一般の方はもちろん、ケアマネージャーや役所の担当職員でさえ知らない場合が多いです。全国的に行われている制度ではあるようですが、厚生労働省などの省庁が決めた制度ではなく各自治体が運用している制度であるために、あまり知られていないようです。

 

実際に、私が担当していた老人ホームの入居希望者の話ですが、一人暮らしのお母様が急に体調を崩して地元の鹿児島から息子の住む東京に移られていました。それまでは一人で生活できていたので介護保険の申請をしていなかったために急いで介護保険の申請をする必要がありました。お母様は体調が悪く、鹿児島まで行ってこられる状態ではありませんでした。そのためにご家族の方々も地元での介護保険認定調査のために悩まれていました。そこで『認定調査属宅制度』を案内させて頂きました。

 

しかし『認定調査属宅』のお願いをしに鹿児島の役所で相談をしましたところ、役所の担当者いわく「そのような制度はありません」と断言。家族の方はひどく混乱して私に電話をかけてきていました。でも、おそらく役所の担当者が知らないだけであると伝え、私が鹿児島の役所に電話をかけて制度の説明と再確認をお願いしました。役所の担当の方も慌てて色々と調べたようですが結果的には制度の存在が確認でき、東京で介護保険の認定調査が受けられ、無事に要介護認定が確定しました。

 

5.「一人暮らしが大変」と思ったら早めの要介護認定を取得しましょう。

 

高齢者になると元気に暮らしていても風や転倒などで突然介護の必要な状態になります。まだまだ元気なときはよいのですが、「一人ぐらいが大変」と思ったら役所や地域包括支援センター(あんしんすこやかセンターなど)に相談し、突然訪れる介護に備えましょう。身体の介助以外でも炊事などの家事全般のサポートも介護保険の給付対象なので、日常的な家事の負担も軽減できます。